前回の話では、柱・梁・壁の鉄筋がどのような関係になっているのかを覚えてしまう事と、部位によって呼び方が色々あって困るという話を取り上げました。
鉄筋の部位ごとの呼び方については私も正直言ってあまり自信がありませんが、呼び方よりも納まりを覚える方が先という話もしてきました。
もちろん理想的な事を言えば全てを一気に覚えるのが良いのですが、それが難しい場合には優先順位をつけて覚えていくしかありません。
そうやって考えた時には、鉄筋の呼び方というのはもう少し後で覚えても良いのかな、という感じになってきます。
さて、こうした鉄筋の基本的な配置(と一応は呼び方)を覚えたら、次のステップとして「かぶり」と「定着」と「継手」について知っておく必要があります。
鉄筋の納まりを覚えるにあたって、かぶりと定着、そして継手に関する話は避けて通ることが出来ない項目ですから、ここである程度考え方を覚えてしまいましょう。
鉄筋については、「納まり」の検討という意味ではここからが本番という感じです。
それぞれの項目についてはもう少し細かく説明をしていきますが、ここでそれぞれの言葉について簡単にではありますが説明をしてみたいと思います。
□かぶり
鉄筋の外面がコンクリートの表面からどのくらい埋め込まれているか、という寸法を指して「かぶり」と呼びます。
鉄筋は鉄で出来ているので、ある程度コンクリートの中に入っていないといけない、という意味で被り寸法は重要になってくるんです。
構造設計をする際には、それぞれの場所でどの程度のかぶりを最低限取らなければならないか、という数値が記載されることになります。
一般的には40mm程度の寸法をがぶり寸法として見込むことになりますが、例えば地中にある梁や基礎などはこれよりも多く70mm程度確保したりします。
鉄筋コンクリート造の構造を考える際には、この「かぶり」を守ることがまずは大前提となり、それを守ることが出来ない場合は後々の性能劣化を招くという重要な項目になります。
コンクリートの外面サイズと鉄筋の仕様を見た時に、かぶりを考えると全然納まらないという場合も結構ありますので、きちんとかぶりを押さえておく検討が必要になります。
□定着
鉄筋コンクリート造では、柱や梁や壁などの構造体が単独で存在してもあまり意味がありません。
大梁であれば柱にきちんとつながっている必要がありますし、小梁であればきちんと大梁のつながっている必要がある、というようにそれぞれの部材を繋げていく必要があるんです。
そうしないと、それぞれの部材にかかる荷重を次の部材に伝達することが出来ませんので、建物の骨組みがそもそも成り立たなくなることになります。
コンクリート自体は柱と梁でつながっていますから、構造的につながるということはつまり鉄筋がしっかりと接続されているという事です。
柱と大梁の関係で言えば、大梁の主筋を柱の中にのばしていくことを「定着」と呼び、どのくらい主筋を柱の中に飲み込ませているかを「定着長さ」と呼びます。
この長さが確保出来ていないと構造体として成立しませんので、鉄筋の納まりを検討する際には最も気をつけなければならない項目になります。
□継手
鉄筋というのは製造する際の限界とか運搬出来る限界などによって、ある程度長さ方向の最大値が決まってしまうものです。
とは言っても建物のサイズは鉄筋の限界長さによって小さく出来るものではありませんので、どこかで鉄筋をつなげて使っていくしかないという状況があります。
高層建築物の高さにあわせて50mの長さを誇る鉄筋を用意した、とか言われても、工場から建築現場に運ぶことすら出来ませんよね。
そもそも現場での施工は通常1フロアずつ進むものですから、施工にあわせて少しずつ鉄筋を伸ばしていく必要があって、結局はそんな長さの鉄筋は使えないんです。
そう言った意味で、鉄筋と鉄筋をつなげて使っていくことはどうしても発生するもので、鉄筋同士を接合していくことを「継手」と呼びます。
継手にはいくつかの種類がありますが、それは継手の項目で詳しく説明することにして、まずは継手の考え方だけをここでは説明します。