コンクリートを打設する為には、型枠をどのような形状で組み立てるかという計画をじっくりと練ってから実際の施工を進めていく必要があります。
型枠はあくまでも合板を並べたり切り欠いたりしながら組み立てていくものですから、ある程度型枠の施工がやりやすい計画にしていくことも、実際の施工にあたっては意外に重要だったりします。
施工がやりにくい
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施工に手間がかかる
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作業のペースが遅くなる
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作業完了までに時間と人数がかかる
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最終的にはコスト(人件費)と工期がかかる
ということになって、施工が難しい部分に苦労をした結果として、少しずつ工程がずれてしまい、結局はかかるコストが増えてしまいがちなんです。
これはあくまでも施工者からみた考え方でしかありますが…
建物として同じスペックのものを造っていくのであれば、出来るだけスムーズに施工が出来るような計画をしていく方が有利になってくることは間違いありません。
とは言っても、施工のやりやすさを優先して考えていく時に、建物のデザインとして施工が簡単になるような形状が許容できるのか?
…というあたりが非常に重要というか、そう簡単にはいかない部分ではないかと思います。
そうした部分を色々と考えていくと、キリがないというか、設計者や施工者など立場によって様々な考え方があるので、あまり単純な話にはならないというのが現実です。
今回はそのあたりの話を取り上げてみたいと思います。
まずは施工のやりやすさについて考えると、コンクリートの最終形というか出来上がる予定の形状がシンプルな方が、型枠の加工は楽になるというのが現実です。
型枠の形状については、複雑な形状を目指すと加工が大変になるし、間違いの可能性も高くなってしまう、という当たり前の話もあります。
型枠を加工する場合の都合だけを考えると、もちろん手間をかければかなり複雑な形状の型枠を作ることも出来ますが…
物事を判断する基準は「施工が出来るか出来ないか?」という話だけではない、というあたりが非常に厳しいところです。
・それが果たして必要だからそうしているのか?
・わざわざ手間をかけてそうする目的があるのか?
というようなことを色々と考えていき、結果としてそうした必要性がない部分は簡素化してコストをそぎ落としていく、というような作業がプロとしての仕事だと言えるでしょう。
あまり面白い話ではありませんが、趣味で建物を建てている訳ではないですから、常にコストのことを意識していくことが仕事としては重要になってくる訳です。
あまり現実的ではない形状の型枠を苦労して組み立てて、そこに頑張ってコンクリートを流し込んだとしても、それが結局仕上材で隠れてしまうようでは残念としか言いようがありません。
型枠を組み立てる手間とかコストも当然無駄になってしまいますし、そこにかかっていく検討の労力も無限ではないので、そうした労力はもっと別の場所に使いたいものです。
また、もしそうした複雑な形状のコンクリートを見せる場合であっても、複雑な形状だから美しいという訳でもなく、シンプルな形状の方が美しかったりします。
そのあたりは意匠設計者が検討すべきものですが、どのように見せるかという部分とかかる手間などを総合的に判断するのはなかなか難しいものです。
当然施工のやりやすさなどの話は施工者が考えるべき事ですが、こうして「どのように見せるか」という話が絡むので、意匠設計者にも大いに関係がある内容になってきます。
構造設計者にとってはそれ程シビアな話ではなく、単純に構造体さえ確保されていればそれでOKなので、そこまで気にする事はありませんが…
意匠的には大きなこだわりがある場合も多いので、図面で事前に設計者と施工者とで打合せをしていく必要があります。