□実際の建物を見る事
先ほどはスケッチの重要性について色々と書きましたが、アイソメなどの技術を高めるにはもう何枚も何枚もスケッチを描くしか道はありません。
これはスポーツなどでも同じだと思います。
例えばテニスを例に出してみると、ラケットの握り方や振り方などは本で読めば知識として充分頭の中に入ってくるはずです。
しかし実際にやってみると思ったように体は動いてくれないはずで、イメージ通りに体を動かす事が出来るように何度も練習が必要になります。
ちょっとテニスの例ではマイナーだったかも知れませんが、野球やゴルフなどでもこれと似たような話が絶対にあるはずです。
スポーツと図面を一緒にするのはちょっと違う気もしますが、繰り返し練習する事によってしか上達しない、という話は共通して言えることではないかと思います。
また、実際に手を動かすことも重要ではありますが、建物の納まりについてスケッチをする場合には、実際の建物をよく観察することも重要な要素になります。
自分がスケッチで表現しようとしているのは、既に目の前にある完成した建物と同じである場合が結構あるはずなので、そうした目で建物を観察することは結構重要なんです。
スケッチをする為だけではなく、最終的に建物をどのように見せるかという部分でも、既に完成している建物は大いに参考になるはず。
もちろん全て同じにするのは「パクリ」なのでお勧めすることは出来ませんが、納まり関係を参考にしていくことは全然OKだと思います。
建物の納まりパターンはそれ程多くある訳ではないので、その中でどのような納まりを選定していくか、という目で完成している建物を観察するのは効果的です。
私ではありません、と前置きをしておきますが…
時々ある程度有名な建物の写真を撮ってきて「こんなイメージです」という意匠設計者がいますが、さすがにそれはNGではないかと思います。
それでは意匠設計者としての信用を失ってしまうので。
参考にするのであれば、写真を撮ってきてそれを参考にスケッチを描いてみるとか、少なくともそのくらいの作業はした方が良いと私は思います。
□納まりの標準図をつくる事
建物の納まりは色々な選択肢がありますが、それとは逆に、ある程度このあたりの納まりは決まっている、という部分も結構多いものです。
例えば石膏ボードの壁と長尺塩ビシート、そしてソフト巾木の関係性は、色々なバリエーションなどなく下図のような関係にしかなりません。
こうした「一般的な納まり」という部分で毎回頭を悩ませても、出てくる結論は上図のようなほぼワンパターンなものになるはず。
そうであれば、ある程度納まりが決まっているものに関しては「標準図」的なものを用意しておく事で、検討の時間を短縮することが出来るのではないでしょうか。
これが「標準図集」を自分の手で作っておく事をお勧めする大きな理由です。
納まりの検討で楽をするのではなく、それ程手間が掛からない部分には標準図を適用して、複雑な納まりの検討や調整に時間を割いた方が良い、という話です。
そうして検討部分にメリハリをつけていく方が、最終的には良い建物が出来上がるのではないかと私は考えています。
また、いくら建築のプロとは言っても記憶力は無限にある訳ではないので、頭の中にインプットしておくだけではなく、紙の資料として用意しておく事には大きな意味があります。
ちょっと回りくどい話をしてしまいましたが、要するに人間は色々なものを忘れてしまう生き物なので、頭の中だけに納まり情報を留めておくのは危険なんですよね。
そうした意味もあるので、今まで経験してきた納まりなどをライブラリとしてファイリングしておき、いつでも取り出せるようにしておくことを当サイトではお勧めします。
苦労してファイリングしてもそのファイルを全然使わない、という場合も結構多いのではないかとは思いますが…
ファイリングしたからこそきちんと頭の中で情報が整理された、という事もあるので、使わないで済むのであればそれでも良いと思います。
危険なのは、自分の頭の中にインプットしたつもりでいて、実際はちょっと曖昧な記憶になっていて、いざという時に全然役に立たない事。
標準図として紙に印刷するには、ある程度納まりが明確になっている必要があります。
そこまでの資料を整えるまでの作業で、自分の頭の中にある情報もかなり整理される事になるので、ぜひ標準図を一度は作ってみることをお勧めします。