鉄筋コンクリート造で鉄筋の検討をする際には必ず出てくる「かぶり」という表現は、実際のところあまり馴染みがない言葉かも知れません。
「かぶり」とは、コンクリートの外面から鉄筋までどのくらいの距離があるのかを示す言葉です。
例えば梁の鉄筋で考えてみると、かぶりというのは下図のような部分を意味します。
主筋を内側にしてスターラップが外側をぐるりと巻いている、という梁の鉄筋納まりから考えると、かぶりは主筋ではなくスターラップに適用されるということが分かります。
同様の考え方をすると、柱であればフープに適用されるということも分かります。
鉄筋コンクリート造(RC造)が構造体として成立する為には、この「かぶり」が非常に重要な要素になってきますので、まずは基本的な考え方を説明します。
鉄筋は当たり前ですが鉄で出来ている為、外部に露出すると錆びてしまい性能を失ってしまうという材料としての特徴をもっています。
そうした酸化を防ぐという目的もあって、鉄筋を保護する為にアルカリ性のコンクリートで覆う、というのが鉄筋コンクリート造の基本的な考え方になる訳です。
コンクリートと鉄筋がお互いの欠点を補い合って成立しているという鉄筋コンクリート造の性質から、鉄筋のかぶりは絶対に守らなければならない項目なんです。
もし鉄筋のかぶりが少ないとどうなるか…
鉄筋のかぶりが少ない部分でコンクリートにひび割れが出来ると、そこから水がコンクリートの内部に侵入してくることになります。
いくらコンクリートの中がアルカリ性だと言っても、直接水が入ってくる状態になれば鉄筋は当然のように錆びてしまいますよね。
そうした状態になってしまったら、自然とひび割れが修復される事はありませんから、そこは常に水が入ってくる状況がずっと続くことに。
そうしてコンクリートの中にある鉄筋は少しずつ錆びが進行していきます。
鉄筋自体が錆びによって少しずつ膨張していった結果、鉄筋を覆っているコンクリートが鉄筋の膨張に押し出される形になり、周辺のコンクリートが剥がれ落ちてしまいます。
このような現象を「コンクリートの爆裂」と呼び、建物の外観、建物の構造、建物の止水性能に大きな欠点をつくってしまうことに。
建築関係の仕事をしている人は皆、自分が造っている建物がこのような状態にならないように気を配っていくのですが、その為には「鉄筋のかぶりを厳守する」事がまずは最も重要なことになります。
鉄筋のかぶりを確保する為の道具として「スペーサー」と呼ばれるものがあって、それを使えばかぶりは確保出来ることになります。
スペーサーには色々な種類がありますが、一般的なのはドーナツ型のスペーサーで、このような使い方をしていきます。
スペーサーをきちんと使っていけば鉄筋のかぶりを確保することは出来るのですが、実際に施工をしてみると、どうしても鉄筋が入らないなどの状況が多々発生するという現実があります。
納まらないからかぶりを犠牲にするという訳ではありませんが、鉄筋が混み合っている状況だとどうしてもかぶりが確保しづらい状況になります。
そうならない為には、鉄筋の納まりとかぶりの重要性をきちんと把握しておき、納まり的に厳しそうな部分を事前に確認しておくなどの対応が必要になってきます。
まあこれは簡単に書いていますが実際はなかなか難しく、施工する段階になってから対応していかざるを得ない状況も恐らく多いかと思います。
そうした現実があるとは言え、鉄筋コンクリート造の建物を設計・施工する際には、鉄筋のかぶりがどれだけ重要な要素なのかを知っておくことがまずは第一歩です。
コンクリートが爆裂まで進行するにはある程度の時間がかかりますから、すぐに大きな問題になることは少ないのですが、ひとたび発生したら対応が大変です。
何よりもその建物に住んでいたり、その建物を利用している方に大きな不安を抱かせる問題ですから、建築のプロとしてそうした問題が発生しないよう細心の注意を払う必要があります。