鉄筋コンクリート造(RC造)の骨組みを構成する要素として「構造体」があって、実際に施工するコンクリートの大きさは「構造体」よりも少し大きくなる傾向にあります。
構造体というのはあくまでも建物を構成するために必要となる最低限の大きさなので、建物の見た目などを考えた際に、少し調整する場合が多いんです。
という話を前回は紹介しました。
「構造体」の大きさと「実際のコンクリート」の大きさは違ってくる場合が多いという話ですが、では何をもって構造体の大きさを判断するのか、というのが今回のテーマです。
そこには鉄筋コンクリートを構成する重要な要素である「鉄筋」が大きく関わってきます。
少々前置きが長くなってしまいましたが…
構造体というのは鉄筋が配置されている部分のコンクリートの事を指していて、それ以外のコンクリートは意匠的なものである為、構造体とは見なされません。
例えば柱の場合、構造図には柱サイズと鉄筋の仕様が以下のような感じで記入されています。
構造図によって少しずつ表現は違いますが、記載されている内容はほぼ同じです。
柱符号:C1
サイズ:800×800
主筋:16-D19
HOOP:D13@200
これによって分かるのは、C1という符号が付けられた柱の仕様として、構造体の大きさが800×800でD19の主筋が12本、HOOPがD13を200ピッチで配置という事です。
こうして言葉で表現すると今ひとつ分かりやすくないのですが、図面にしてみると非常に分かりやすくなると思います。
これが柱の構造体になります。
鉄筋が構造図通りに配置された状態のコンクリートを構造体と呼ぶんです。
ただ、特に何もなければそのままの大きさで良いのですが、この柱をタイル張りで仕上げようとした場合は大きさの調整をしないと後で困ることになります。
例えばタイルサイズでは一般的な45二丁掛タイル(95mm×45mm)を柱に張りたい場合。
目地は基本的に5mmになるので、綺麗にタイルを貼りたい場合はタイル外側寸法で795とか895という数値になってきます。
タイル外々で795だとコンクリート柱よりも小さくなってしまうので現実的ではない、という事がまずは分かります。
800×800の柱に45二丁掛タイルを綺麗に貼ろうとすると、タイルの外々で895が適切な数値ということになります。
外々895のタイルを800×800のコンクリート柱に貼ることを考えると、タイルの厚みと施工スペースを含めて47.5mmになります。
ただ、図面にしてみると分かりますが、これでは広すぎてタイルを貼ることは出来ません。
タイルの厚みは6mm程度で、タイルを貼るためのスペースとしてはタイル厚を含めて20mm程度が適切な寸法になるので、コンクリートのサイズとしては855(895-20-20)にしておくと、後でタイルを貼る時に上手くいきます。
言葉で表現すると自分でも訳が分からなくなってしまいそうですが、これを図面で表現してみるとこんな感じになります。
この図面ではあえて構造体と鉄筋を表示していませんが、構造体に対してコンクリートのサイズが少し大きい場合でも、構造体自体の大きさは800×800のままになります。
図面に構造体と鉄筋を記入してみるとこんなイメージになります。
構造体の外側に位置するコンクリートは単純に意匠的な都合で打設されるコンクリートで、「構造体」という表現に対して「増し打ち」とか「フカシ」などと呼ばれます。
構造図では構造体だけを表現する事になりますが、意匠的な都合で増し打ちをする場合も多いので、構造図だけを見てコンクリート形状を決める訳にはいかないんです。
コンクリート形状と構造体との関係については、これで説明を終わりにします。
増し打ちについてはいくつか注意点があるので、そのあたりについて次回に少しだけ説明を続ける事にします。