今回も引き続き鉄骨造のデメリットについて考えていく事にします。
○鉄骨は熱に弱いのでその対応が必要
鉄というのは、非常にざっくりと書いてしまうと、鉄鉱石とコークスを熱で溶かしたものをローラーで平らに(圧延)して造っていくものです。
そうした材料としての特徴があるものですから、鉄は熱にあまり強くないという、構造体としてはあまり好ましくない特徴を持っています。
構造体である鉄骨が熱に強くない状態だと、どのような状況が考えられるかというと、やはり問題は火災が発生した時にあります。
鉄骨が熱に弱いという話はありますけど、もちろん通常の温度でどうこうなるようなレベルではないので、真夏の最高気温が何度であっても全然問題はありません。
しかし万が一建物に火災が発生してしまった場合には、建物内部の温度はあっという間に1000℃を超えてしまいます。
鉄骨の強度は温度が500℃を超えたあたりで半分に、1000℃を超えたあたりでゼロになってしまうという特性があるので、火災時には構造体としての鉄骨は強度がゼロになる危険がある訳です。
構造体の強度がゼロになる訳ですから、当然建物は崩壊してしまう危険があり、そうした危険を避ける為に鉄骨造の建物では耐火処理を行うことが定められています。
コストや施工性などを考慮していくと、最も一般的な耐火処理の工法は「耐火被覆(たいかひふく)」と呼ばれるもので、イメージはこんな感じ。
こうした対応が必要だという事は鉄骨造では当たり前のことなので、この点をデメリットとしてピックアップするのも微妙な気がしますが…
鋼鉄という材料の特性でこのような問題があって、それをフォローする為に必ず耐火処理をしなければならないのは事実なので、ここではデメリットとして紹介しました。
○錆びる危険性があるため外部での使用には気を遣う
前回紹介した「鉄骨が熱に対してあまり強くない」という話は、鉄という材料が持っている特徴のひとつになりますが、今回紹介する「鉄骨は水に弱い」というのも同じような話になります。
一口に鉄と言っても含有している成分は仕様によって色々ありますが、鉄である以上はどうしても水に接すると錆びてしまうという特徴から逃れられません。
錆びの懸念があるために、構造体として外部で使用される鉄骨は、室内と同じような仕様で構成する訳にはいきません。
風雨に晒されても錆びないように、一般的には「溶融亜鉛メッキ」と呼ばれる処理をした鉄骨が外部では採用されることが多いです。
溶融亜鉛メッキの鉄骨はこのような見え方になります。
メッキをかけた当初は結構ぎらぎらしていて「見た目は大丈夫?」と思ってしまいますが、しばらくするとくすんだ色になって落ち着いてくるので、そんなに悪い雰囲気にはなりません。
まあ意匠的に素晴らしいとは言いませんが…
溶融亜鉛メッキをかけた鉄骨に対して溶接するのはNGになるので、何かを固定する場合にはボルト固定などを考える必要があります。
もしくは、工場で取り付けた状態でメッキをかけるかですが、あまり厚みがない部材をメッキ層に入れると曲がってしまうので、そのあたりが難しいところです。
鉄骨造の建物を計画する際のデメリットについてはこのあたりで終わりにします。
結局のところ、鉄骨という材料が持っている特徴がメリットにもなるし、それが逆にデメリットにもなるという事で、そのあたりは鉄筋コンクリート造と似ています。
鉄骨も鉄筋コンクリートもそれぞれ一長一短という事ですから、それぞれの特徴を上手く掴んでおき、メリットが生きるように適切な選択をしていく事が正解なのだと思います。
そうした適切な選択をする為には、それぞれの構造について深く知っておく方が有利ですから、当サイトで説明している内容を踏まえてさらに知識を増やしていくことをお勧めします。
これで鉄骨造(S造)に関する基本的な話はひとまず終わりにします。
まだ色々書きたいこともありますので、後から追記していくかも知れませんが、まずは次の鉄骨鉄筋コンクリート造の話に進んでいきたいと思います。