鉄骨造は非常に優れた工法ではありますが、現実の業務を考えた時には、それなりにデメリットと言えそうな部分もあります。
前回はそのような内容の話をしましたので、今回からはもう少し具体的な内容を交えて説明をしていこうと考えています。
・工場で製作をする為の事前準備が大変
・鉄骨は熱に弱いのでその対応が必要
・錆びる危険性があるため外部での使用には気を遣う
前回挙げた項目は上記ですが、今回はその最上部にある「工場で製作をする為の事前準備が大変」というあたりについて考えてみる事にします。
○工場で製作をする為の事前準備が大変
鉄骨造の建物では、構造体である鉄骨を工場で製作してくることによって、工期の短縮を図ることが出来るというメリットがあります。
しかしそのメリットを充分に生かすためには、現場で施工するタイミングに合わせて鉄骨が出来上がっている必要があるので、製作期間を意識したスケジュール調整が必要なんです。
鉄骨造の建物が施工される状況を外から眺めていると、どんどん鉄骨が運び込まれて組み立てられていく様子を見ることが出来ます。
毎日見ていると、一目で分かるくらい工事が進行していきますから、建物の骨組みはあっという間に出来上がってしまうんだな…と思ってしまいます。
これは確かに事実で、工場で製作した完成品を組み立てるという作業の特徴が、この施工スピードを実現しているという事なんです。
ただ、そうしたスピード感のある鉄骨の施工を実現する為には、事前の納り検討を欠かすことは出来ないので、施工者はその膨大な作業量の多さに苦労する事になります。
・まずは構造体としての鉄骨が成り立っているか
・完成した鉄骨は運搬可能な大きさになっているか
・床仕上に対して梁のレベルが適切か
・鉄骨に取り付けておくピースは不足していないか
・設備検討によるスリーブは適切に配置されているか
・天井との関係には無理がないか
思いつくままざっと挙げてみましたが、結構項目としては盛りだくさんだと言えます。
これらの項目をひとつずつ丁寧につぶしていき、構造体として間違いのない鉄骨を製作する事にプラスして、仕上材の取付も考慮していく必要があります。
これは実際にやってみると、控えめな表現をしても結構大変な作業です。
こうした「検討事項が多くて大変」という事をデメリットとして挙げるのは、ちょっと違うかも知れないよな…と思うこともあります。
仕事ですから大変なのは当たり前、というような乱暴なことは言いませんが、プロとしてスキルを求められる仕事では、ある程度苦労をする事になるのは仕方がありません。
プレッシャーとか責任が問われる仕事は確かに大変ではありますが、そうした要素が全くない仕事の方が良いかどうかはその人の性格によると思います。
仕事量とプレッシャーが多くて大変、と思ってしまう仕事もありますし、暇すぎて困るし一年後も同じ仕事をしていそうで怖い、と思ってしまう仕事もあるでしょう。
どちらが良いかは私には判断出来ませんし、そもそも判断したところで好きな方を選べる訳でもないという問題もあったりします。
このあたりの話は複雑な感じだし、建築の納りとは少し違う方向の話になるので、あまり深入りすることはせずに話を戻しましょう。
ここで敢えてデメリットとして挙げたのは、これらの多岐にわたる検討事項を、建築工事の序盤にまとめて一気にこなさなければならないからです。
最終的な仕上納りが分かっていないと決められないような項目もある中で、工事としては土を掘っているくらいのタイミングで決めておく必要がある、というのはやはり大変です。
そうした事前の検討があるからこそ、工場できちんと製品が完成する訳で、その鉄骨を現場で組み立てるだけなので作業スピードが速い、ということが可能になるんです。
工場で製作することによるメリットを充分に発揮する為には、事前の仕込みがどうしても必要になてきて、その作業はなかなかに大変なものだという話でした。