前回は製作図の種類について考えてみて、建物の規模にもよりますが、製作図の物量はなかなかの量になっていくという話を取り上げました。
設計図に比べると施工図の枚数は多くなっていて、施工図に比べると製作図の枚数はさらに多くなっていく、というような関係が一般的です。
これは図面の細かさによって決まるものなので、最も細かい部分について表現している製作図の枚数が多いのはごく自然な事だと言えるでしょう。
今回はそんな製作図がまとまるまでの簡単な流れについて考えてみる事にします。
製作図はまず設計図と施工図を参考にして、メーカーとして実際に工場で製作することが出来るようにという検討を加えつつ作図されるところからスタートします。
設計図に記載されている内容は基本的には守るのですが、製品として難しい場合はちょっと内容を変えてしまう必要がある。
そのあたりの話は、設計者と施工者そして製品を製作するメーカーとで細かく煮詰めていく事が求められてきて、その為にも製作図が利用される事になります。
もう少し具体的に言うと、以下のような流れで製作図が流れていき、その中で設計者や施工者の考えを調整していく感じです。
・製作図作図(メーカー)
・施工者による製作図のチェック(設計図との整合や寸法の確認)
・設計者に製作図を提出
・設計者による製作図のチェック(意匠的な考え方の確認)
・図面返却
・指摘内容によって製作図修正(メーカー)
・施工者による製作図の最終確認(指摘事項が修正されているか)
・設計者に製作図を提出
・設計者による製作図の最終チェック(指摘事項の確認)
・図面返却(承認)
こうした手順を経て、設計者と施工者が問題ないと判断した図面が完成していく事になり、その図面を元にして工場で製作を開始します。
図面のやりとりだけでは細かいニュアンスが伝わらない場合もあるので、時には設計者と施工者とメーカーとで打合せをする場合もあります。
そうして製作図によって細かい部分の納まりを詰めていき、最終的な完成形について施工者と設計者とで共通認識を持っておく。
これが製作図の大きな役割になります。
「共通認識を持つ」というとちょっと大げさな感じがしてしまいますが、どのような建物を造っていくのかの意思統一をするのは非常に重要な事です。
お金をかけて建物の完成予想図を造るのも同じ目的があるからで、それが上手くいかないとせっかく完成した建物も喜ばれない事になってしまいます。
そうなってしまうとあまりにも報われないので、出来るだけそうした状況にならないようにする事が重要になってきます。
製作図などの細かい図面をお互いにチェックすることによって、出来上がり形状がどのようになるのかの共通認識を持つというのは、そうした狙いもある訳です。
工場で製品を製作するのはそれから。
そうしないとせっかく製作した製品が「これではダメ」となってしまう可能性もあるので、充分に打合せをしていく事が重要です。
書類として残しておくことも重要で、提出した製作図が返却されて「承認された状態」になってから製作を開始するという流れになります。
施工図に比べるとかなり膨大な種類と物量がある製作図をもれなく作図していき、内容を確認して設計者に提出して承認を得る。
これは言うまでもない話ですが、こうした業務にはかなりの労力が必要です。
それを乗り越えてようやく工場での製作に着手することが出来て、製作期間を経て現場に搬入されて取り付けることが出来る、という流れになっていきます。
このあたりのスケジュールについては次回にもう少し説明したいと思います。