前回は建具キープランについて説明をしてきましたが、今回は建具キープランに深く関連する図面である建具表を取り上げます。
建具キープランというのは、平面図に記載されている建具ひとつひとつに、まずは識別可能な符号をつけていく事を目的として作図されます。
意匠図として建具情報に特化した図面を作成するのは、簡単に言ってしまえば、建具の仕様には様々な種類があるからです。
単純に「ここには鋼製ドアを取り付ける」という指定では、情報としてはちょっと不足なので、ある程度詳しい情報を記載しておく事がどうしても必要なんです。
どのような建具を取り付けるのかを明確にしておかないと、施工段階でどのような製品を造れば良いのかが分からないですよね。
そのような曖昧な状態ではコストをはじく事も出来ないので、やはり建具の情報は意匠図によって明確になっている必要がある、という事です。
まずは前回も紹介しましたが、建具キープランというのはこんな感じの図面になります。
この建具キープラン上でに建具の細かい仕様を記載していく事が出来れば、1枚の図面に全ての情報が集約されて良いのですが…
実際にはスペースの問題でそれは不可能に近いので、まずは平面上で符号をつけていき、その符号を持つ建具の仕様を建具表で詳しく説明していく。
そんな情報の流れで建具の詳細を表現していく事になります。
建具表の書式は設計者によって、というよりも設計事務所がそれぞれ持っている書式によって、様々なパターンがあります。
ただ、書式が設計者によって異なっているとしても、そこに記載されている情報はそれ程大きく変わってくる訳ではありません。
・建具符号
・建具を取り付ける部屋
・建具の基本仕様
・建具の有効巾と有効高さ
・数量
・建具の姿
・ガラスの情報
・付属金物の情報
・その他特記事項
建具表には大抵の場合上記のような情報が記載される事になります。
建具キープランによって、平面図上にある建具の符号を知り、建具表によってその符号を付けられた建具の細かい性能を知る事が出来る、という感じです。
建具表にパターンが重要なのではなくて、そこに記載された情報の方が重要になるので、上記のような基本仕様が記載されていれば書式はどのようなものでもOKです。
建具表がどのような感じになるのかというと、一例ではありますが、こんな感じで表現される事になります。
まずは建具キープランから建具符号を追っていき、該当する符号の建具がどのような仕様になっているかを表現することになる訳ですが…
上記の建具表を見ると、以下のような条件で建具が取り付けられる事が分かります。
事務室の出入り口にW750×H2000の鋼製ドアを取り付けて、ガラスを入れた扉にして、なおかつ防火設備の仕様。
これが建具表から読み取ることが出来る情報になります。
このあたりの情報は建具の基本的な情報になっていて、これが分からないとどうにもならない、という位に重要な情報になります。
その他にも付属金物として、ドアクローザーが取り付けられる事とか、レバーハンドルを取り付ける事などが建具表からは読み取れます。
ドアクローザーというのはこんな感じの金物で、開いた扉を自動的に閉めるようにサポートする為に必要な建具関連の金物です。
これがないとドアは開けたらそのままになるので、開き扉には付けておいた方が良い金物なのですが、ドアクローザーにも色々な仕様があるものなんです。
同じようなドアクローザーではありますが、「コンシールドタイプ」と呼ばれる、建具枠の中にドアクローザーが組み込まれた仕様というのも存在しています。
もちろんコンシールドタイプの方が見た目はすっきりするので、見た目だけを考えるとコンシールドタイプになるのですが…
コスト的にはかなり高額になることと、通常のタイプに比べるとやや耐久性に劣るという問題があるので、何も考えずに「全部コンシールドで」とかには出来ません。
あまりドアクローザーを見せたくない場所に限定して採用していくなどの方針を決めるのは、やはり意匠設計者という事になります。
こうした細かい部分まで意匠設計者として指定することが出来るので、色々なこだわりをもって記載していく図面になるのではないかと思います。