今回紹介する意匠図は外部仕上表と内部仕上表です。
仕上表というのは建物の仕上材としてどのようなものを採用するのかを表現する図面で、特記仕様書について説明した時にも少しだけ登場したかと思います。
建物にはその用途によって色々な部屋があり、当たり前の話ではありますが、その部屋の使い道によって仕上材のグレードは少しずつ違ってきます。
仕上表によってそれぞれの部屋ごとの仕上材を指定する事で、設計者として部屋のグレードを仕分けしていく事が出来る訳です。
仕上表には外部仕上表と内部仕上表とがありますが、表現しているのが外装関連の仕上材なのか、それとも内装関連の仕上材なのかという違いがあるだけ。
仕上表としての主旨はどちらも変わらず、それぞれの部屋や部位などに使用する仕上材を指定していく為に作図されます。
当然仕上表は「表」ですから、図面とは言っても線や円などの図形は存在せず、特記仕様書と同じようにひたすら文字情報が並ぶ事になります。
でもそれで仕上表としての役割を充分に果たすことが出来るので、文字情報だけで大丈夫という感じの図面です。
もちろん意匠図は最終的な建物の形状を表す図面ですから、文字情報だけで全ての情報を伝達出来る訳ではありません。
仕上表は平面図など、線と円を組み合わせて作図された「図」と一緒に見る事によってはじめて意味を持ってくる訳ですが…
それぞれの図面がお互いに表現している情報を補完し合うことで、建物の大まかな情報から細かい情報までの全てを見る側に伝達する。
設計図はそのような考え方で作図されるものです。
そうした中で仕上表はそれぞれの仕上材にフォーカスして表現している図面という事になります。
この仕上表があるおかげで、平面図や断面図などで表現された線や円などの「図」に意味が与えられる事になります。
そう言った意味では、この仕上表というのは意匠図の中でも特に重要な図面ではないかと個人的には思っています。
図面に引かれる線の一本一本にはそれぞれ意味がある。
これは図面に関わる仕事をされている方にとってはよく分かる言葉ではないかと思います。
例えば平面図などに引かれた線が何を意味しているかと言うと、その線は壁の切断線だったり階段を構成する段々の見え掛かりだったりする訳です。
もちろん図面を見なければ分かりませんが、そうした線にはそれぞれきちんとした意味があって、それではじめて平面図や断面図が構成されます。
今回紹介している仕上表は、そうした平面図などで表現される線にさらに深い意味を付加することになるはず。
2階 事務室
床:タイルカーペット(A) t=6.5
巾木:軟質ビニル巾木 H=60
壁:EP
天井:GB12.5+岩綿吸音板9
これは特記仕様書について説明した際に例として出した仕上表ですが、この情報を踏まえて平面図を見ると、壁の線にはさらに深い意味が出てきます。
つまり、壁の線はEP(塗装)の壁を表している、という事です。
ちょっと簡単すぎる図面で申し訳ありませんが、例えば上図のような事務室の平面図があったとします。
この平面図に仕上表の情報を追加すると、壁の線が塗装された壁を意味していて、という感じでさらにイメージがしやすすくなります。
このようなシンプルな部屋のスケッチはあまり描く意味がありませんが、あえて部屋のスケッチを作図してみるとこんな感じに。
意匠図を見る側にこうした最終的な建物の完成イメージを感じてもらう、という狙いが仕上表にはある訳です。
もちろんコストの算出にも影響する事になる図面でもあるので、意匠図の中でも非常に重要な図面の一つだと言えるでしょう。