前回はピクチャーレールの具体的な納まりについて考えてみましたが、見た目を気にするのであれば、天井内に埋め込む納まりがお勧めという話で終わりました。
商品の価格としてもそこまで大幅に違う訳ではないので、納まりを検討する際にはまず天井内に埋め込みで検討をしてみる事をお勧めします。
ただ、部屋の条件などによっては天井埋め込みだと良くない場合もあるので注意が必要です。
例えば天井高が高い部屋などで天井面にピクチャーレールを取り付けると、圧倒的に使い勝手が悪い状態になってしまいます。
これはちょっとダメでしょ…という図面がこちら。
上図のように天井高が4mもある部屋であれば、天井にピクチャーレールを取り付けてしまうとワイヤーが長くなってしまいあまり美しくないです。
このような場合には、頑張って人が届くくらいの位置にピクチャーレールが欲しいはずなので、その場合は壁面取り付けが正解という事に。
ピクチャーレールを意匠的にどう見せたいかという話と、実際の使い勝手を考えるとどの位置に欲しくなるかという話があるので、どちらか一方を重視するのはちょっと危険です。
こうした検討は意匠設計者と施工者の役割なので、どちらかに偏るのではなくバランス良く納めるように検討をしていく事がポイントになります。
ピクチャーレールの納まりとしては、前回紹介した断面図で特に問題はないので、説明はこれで終わりにしようと思いましたが…
ピクチャーレールは耐荷重によっていくつかの仕様に分かれてくる、という説明がまだ出来ていなかったので、今回はそのあたりの話をしていきます。
ピクチャーレールの商品カタログを調べていくと、使い方によってかかる荷重が違ってくる関係で、どこに固定していくかという納まりが少しだけ変わってくることが分かります。
確かに美術館などで大判の絵画を展示する際に使うものと、一般家庭で調理器具などを吊るために使うものとで、同じ商品のはずはないですよね。
まずは荷重が軽いものから紹介していくと、長さ1mにつき荷重8kg程度の軽いものを吊る場合のピクチャーレール納まりがこちらです。
壁の下地材であるLGS又は木軸に正面からビスで止めていく納まりで、手軽な分だけ納まりは非常に簡単になっています。
次に紹介するのは長さ1mにつき荷重15kg程度のピクチャーレールの納まりですが、納まりとしては荷重8kgの場合とほぼ同じです。
ちょっとレールがゴツくなった感じですが、壁下地のLGS又は木軸に正面からビスで止めていく納まりの考え方は同じです。
次に紹介するのは長さ1mにつき荷重30kg程度のピクチャーレールで、納まりはやはり変わりませんが、レールの断面がかなり太くなってきました。
このあたりの製品までは基本的な納まりが変わる訳ではなく、製品の性能が少しずつアップしているというような考え方になっています。
最後にこれは美術館などで採用する対応で、長さ1mにつき荷重70kg程度のピクチャーレールですが、さすがに下地の対応が少し変わってきています。
天井面に取り付けるタイプでは、軽量鉄骨天井下地に固定していくのではなく、壁の下地材からアングル材をがっちりと固定する納まりに。
もしくは吊りボルトから固定している下地に取り付け、そこにピクチャーレールを流していく納まりも選択肢としてはあります。
いずれにしてもコンクリート壁や上階スラブにしっかりと固定していくことが求められるので、こうした荷重が大きい仕様の場合には注意が必要です。
ただ、一般的な建物ではそこまでの仕様を選定しない事がほとんどなので、気にしていてもあまり登場しない可能性は高いですが…
美術館や展示場などの建物であれば使用頻度としては高くなるはずなのですが…建物の種類が限定されすぎですよね。
とは言ってもそれほど難しい納まりでもないので、荷重が大きくなると納まりが変わってくる、という事だけでも覚えておくことをお勧めします。