納まりを検討する側としては、実際に図面では表現をしないけれど、現実として仕上材がどのように施工されるかをしっかりと知っておく必要があります。
前回はそのあたりの話を、実際の断面納まり図を元にして具体的に説明をしてみましたが、イメージは何となく掴めたでしょうか。
理想的な納まりを知っておく事と、それを実現するにはどのような問題があるのかを知っておく事と、納まりを検討する側にはその両方の知識が必要です。
どちらの知識もバランス良く持っていないと、施工精度を考えない理想的すぎる関係性を目指してしまい、結局は現実としてそんな施工は出来ず綺麗に納まらない、という状況になってしまいます。
これは施工者側の都合でそのような納まりにするという雰囲気がありますが、最終的に建物を美しく納めるという目的があるので、意匠設計者の為の話でもあるんです。
やはり施工の現実を知っておいて、そうした誤差をどこかで吸収していく納まりを前提として、その納まりをどこまで洗練したものに出来るか、という話ですね。
前回はこうした納まりの例として、天井までの鋼製建具枠の納まりを取り上げましたが、やはり下図のようなギリギリの納まりは現実問題かなり実現は難しいものです。
上図の納まりでは、施工精度という問題の前に、廻り縁の厚みなどを考えると天井仕上レベルは若干下がってしまう傾向にあります。
そうなると建具枠よりも天井仕上面の方が少し下がる関係になってしまい、納まりとしては上手いとは言えない状態になってしまいます。
これでは天井面と扉が干渉してしまい扉が開かないとか、扉を開く際に天井面にこすれて開口の軌跡が傷によって見えてしまうなどの問題が出てしまいます。
これでは結局見た目がおかしくて使い勝手も悪いという事になるので、やはり建具枠を少し天井面から下げて納めていくなどの調整が必要になります。
こうした関係は、建具枠を工場で製作する前にきちんと検討しておく必要があって、それが出来ない場合は後で納まりの問題をどう解決するかの苦労をすることになります。
建具枠の納まりについての話が出たついでという訳でもないのですが、今回はこうした天井までの建具枠に対して廻り縁がどう納まるのかを紹介してみたいと思います。
まずは廻り縁の一般的な納まりとして、下図のようなコ型廻り縁の標準図を例にして話を進めていくことにします。
このコ型廻り縁が天井までの建具に対してどのように納まるかの関係を考えていくと、建具枠の部分にも廻り縁を廻す考え方がまずはあります。
一般部分では壁に廻り縁をぶつけていますが、天井までの建具枠部分に対しては、もちろん建具枠に廻り縁をぶつける感じに。
ただ、この納まりの場合、建具は基本的に壁面に対して10mm程度のチリがありますから、その分だけ廻り縁の位置が建具の部分でずれることになります。
…と、言葉での説明はなかなか伝わりにくいので、天井を見上げた際の天井伏図で表現をしてみると、このような感じに廻り縁が折れていく感じです。
上図では便宜上廻り縁の見えがかり部分に色を付けていますが、実際のコ型廻り縁は天井と同色になるのが一般的なので、それ程目立つ訳ではありません。
そう言った意味でこの納まりも別に悪くはないのですが…
建具のチリ寸法に合わせて細かくクランクしていくコ型廻り縁は、正直言ってあまり美しくないので、納まりとしてはそれほどお勧めは出来ません。
コ型廻り縁をクランクして納めるには、廻り縁を斜めにカットして折っていく必要があって、その部分があまり綺麗に納まらないんです。
こうした斜めのラインも実際には白系の色に隠れてしまうので、上図のように赤い線が入る訳ではないのですが、それでも細かい斜めラインはあまり綺麗ではありません。
それならどう納めるのが美しいかをもう少し考えてみると、というあたりの具体的な考え方については、次回にもう少し説明をしていくことにします。