前回は天井まで伸びている鋼製建具枠に対して、コ型廻り縁をどのように納めていけば良いのかという話で、まずは廻り縁をまわしていく納まりを紹介しました。
天井仕上材と壁仕上材との取合い部分には必ず廻り縁がある、という考え方をすると前回紹介したような納まりになりますが…
建具枠の部分で微妙にクランクしていく廻り縁は、あまり美しく仕上がっているとは言いがたいので、出来れば別の納まりを考えた方が良いと私は思っています。
最初に紹介した納まりを「これはちょっと…」と言うのは少し変な感じですが、まずは基本的な納まりの考え方からスタートしているという事で…
今回は引き続き天井までの建具とコ型廻り縁との関係という事で、前回紹介した納まりの他にどのような考え方があるのか、という話をしてみたいと思います。
別の納まり案としては、建具枠が天井まで伸びているのだから建具枠部分には廻り縁を廻さなくても問題ないのではないか、という考え方があります。
断面図としては上図のような関係で、天井までの鋼製建具枠に対して天井仕上材を差し込んでいくという納まりになっています。
そもそも天井と壁との取合い部分に廻り縁が必要な理由としては、天井仕上材を現場で綺麗に切ることが難しいので、その部分を隠すという目的があるから。
建具枠がある部分は、建具枠に天井仕上材を飲み込ませる納まりになるのだから、天井仕上材の切り口が見えてしまうことはありません。
また、天井仕上材を多少斜めに切ってしまったとしても、それは建具枠で隠れてしまうので、その部分は全く見えてくることはないので、廻り縁を付ける必要がないという結論に。
こうした考え方でいれば、天井までの鋼製建具枠部分には特に廻り縁が必要ない、という納まりでも問題ないのではないか、という事です。
この納まりを天井伏図で表現すると、廻り縁の範囲は下図のような関係になってきて、こうした関係でも特に納まりとしては問題ないと思います。
廻り縁をクランクさせて無理矢理まわしていくよりも、建具枠のチリ部分にぶつけて止める、という考え方の方がシンプルになってくる、という話でした。
ただ、こうした納まりを採用するのであれば、コ型廻り縁の見付は建具のチリよりも小さいタイプを選定しておいた方が良いでしょう。
建具枠のチリ部分にぶつけて納めようとしているので、建具枠の一般的なチリ10mmよりも見付が大きくなってしまうと、下図のような感じで少し微妙になります。
とは言っても、そもそもコ型廻り縁の見付は大きくて10mm程度です。
意匠設計者としてもこの見付を極力小さくする方向で廻り縁を選定するはずなので、建具のチリよりも大きくなってしまう可能性は少ないのですが…
意匠設計者の中には出来るだけ建具のチリを小さくしようとする方もいて、そもそも建具のチリが小さくなってしまうと、廻り縁の納まりは苦しくなってきます。
標準寸法である10mmは大きすぎるから2mmにしたいとか、2mmが無理ならせめて5mmを狙いたいとか、そうした施工者泣かせの話がある訳です。
下手したら「建具枠のチリは0mmでスッキリと見せたい」という施工精度を全く無視した恥ずかしい要望をする意匠設計者もいるので…
施工者としてはチリ0mmなど話にならないので絶対にやらないはずですが、その落としどころとして「0は無理ですからせめて5mmでいきましょう」などになる可能性もあります。
チリが10mmであれば廻り縁の納まりも特に問題はありませんが、チリが5mmだと廻り縁の仕様によっては建具よりも出っ張ってしまいます。
そうした前提条件が変わってしまうような場合もあるので、廻り縁を今回紹介したような納まりにする場合には、建具のチリに気を配っておく必要があります。