コ型廻り縁と十手廻り縁の具体的な形状と、意匠設計者が選定しやすいタイプの廻り縁についての話を前回は取り上げてみました。
見付が出来るだけ小さくて、なおかつ折り返しが付いていないような製品が最終的な見た目としては好まれる傾向にある、という話もありました。
上記のような形状で納めることが出来れば、天井を見上げた際にほとんど廻り縁が目立つことはなく、十手廻り縁を選定すればさらに天井が強調されることに。
これは結構施工に苦労する製品ではありますが、確かに見た目としてはスッキリと納まって美しく見えるかも知れません。
正直なところ、建物を利用する方で廻り縁の見付寸法に注目している方は、恐らくほぼゼロに近いとは思っていますが…
だからと言って廻り縁の形状が何でも良いかというと、そういう話ではないので、意匠設計者としては選定出来る条件の中で見映えが良いものを選定していくしかありません。
さて、今回はそんな廻り縁の製品を引き続き紹介していくことにしますが、今回は同じ見え方になる場合でも天井仕上材によって製品が違ってくる、というあたりの話を取り上げてみます。
サンプルとしてはコ型でも十手でも構わないのですが、ここでは両方のパターンを紹介していくことにして、以下の廻り縁について考えてみましょう。
先ほど紹介した図面で細かく寸法を見て頂くと分かりますが、天井仕上材を差し込む部分の寸法が9.7mmになっています。
これは、天井仕上材として石膏ボードの厚み9.5mmが採用される場合の廻り縁として用意されている製品で、0.2mmはクリアランスという事になります。
当たり前の話ではありますが、クリアランスがないと廻り縁に天井仕上材を差し込むことが出来ないので、廻り縁の納まり自体が成り立たなくなってしまいます。
図面上ではもちろん納まるのですが、実際に納まらない図面では意味がないので、実際を意識した納まりにしておく必要がある、という事ですね。
天井仕上材を差し込めない製品など売れるはずがないので、当然メーカーもそんな製品を発売するはずがない、という事であまり心配する必要はありませんが…
上図で紹介した廻り縁の他のラインナップを調べてみると、下図のような寸法が用意されていることが分かります。
それぞれの製品は以下の天井仕上材を想定して用意されている廻り縁です。
6.2mm : ケイ酸カルシウム板6mm・化粧ケイ酸カルシウム板6mm
8.2mm : ケイ酸カルシウム板8mm・化粧ケイ酸カルシウム板8mm
9.7mm : 石膏ボード9.5mm・岩綿吸音板9mm
12.7mm : 石膏ボード12.5mm・岩綿吸音板12mm
15.2mm : 石膏ボード15mm (←天井ではあまり採用しないボード厚なので用意されていない場合もあります)
最終的な見た目としては、天井仕上材の厚みが天井面からは判別出来ないのと同じで、廻り縁の製品が違っていることは分からなくなります。
しかし天井仕上材に合わせてきちんとマッチするように製品が用意されているので、そのとうな天井仕上材であっても廻り縁の見た目は変わらない、という納まりが実現出来るんです。
これはメーカーとして販売する商品ですから当然の用意と言えばそうなんですけど、納まりを検討していく際にはこうした準備があることを知っておいた方が良いです。
最終的な見た目が同じになるとしても、施工をする際に取り付ける製品は変わってくる事になるので、そのあたりも間違えないようにしておく事が重要です。
もちろん廻り縁を含めて天井を施工する方はプロですから、そのような間違いをすることはあり得ませんが…
注文をする側が間違えた製品を発注してしまうという事はあり得るので、そうした残念な状況にならないように気を付けておきたいところです。