床と壁の取合い納まりによって床コンクリートの段差位置を決める必要があって、その結果によって構造体の位置が決まってくる。
そして、その検討が結果として上手くいかなかった場合には、コンクリートを削るとかモルタルを塗るなど「見えない一手間」がかかり、施工者が管理しているコストを圧迫していく。
前回までの話でこのような主旨の説明をしてきました。
これはちょっと大げさなのでは…と感じてしまうかも知れませんが、そうでもありません。
検討が足りなくてやり直しになったり追加対応が必要になり、コストと工期が圧迫されるというのは、施工者であれば恐らく経験した事があると思います。
図面ではなかなか関係性が分からないような部分でも、施工をしている現場では一目見ればその関係性が分かってしまいます。
要するに図面では納まっていない状態が分からなくても、現場で見れば一発で「これはダメでしょう」という事が分かるという話です。
問題を事前に洗い出す事が図面で検討をする目的になるのですが、その検討が充分とは言えない場合に、このような問題が発生する事になります。
何のための施工図なんだよ…という気持ちになるような残念な話も、施工者であれば何度も経験しているのではないかと思います。
こうした問題が頻発するのは、施工者側であるゼネコンの社員が少なくて人手不足になっている事と、分業化が進んでいるあたりに原因があるのではないかと個人的には思っています。
思っているからといってそれを私が解決出来る訳ではないので、だから何だ、みたいな話になってしまいますが、ちょっとだけそのあたりを書いてみます。
施工者であるゼネコンにも色々な企業があるので、それぞれ組織の作り方は違っていると思いますが、ひとつの現場に常駐するゼネコンの社員の人数はそれほど多くないのが現状です。
毎日職人さんが500人とか1000人入るような大規模なプロジェクトでも、30人程度の社員で現場を運営していく場合が多いと思います。
もちろんプロジェクトの難易度や建物の種類などによって増減することにはなりますが、恐らく余裕のある配員計画が出来る現場はそれほど多くないはず。
以前も少し話をしましたが、建築業界は「下請け」の構造が明確になっているので、それでも組織としては成り立つ事になるんです。
ただ、人数が少ないゼネコンの社員はどうしてもコストを優先して見ていかざるを得ず、納まりの検討などの優先順位は下がってしまいがち。
だからと言って納まりの検討をしない状態だと、前回まで話をしてきたような残念な状況が各所で発生することは目に見えています。
そうした状況に対応する為に、現場やコストは見ないけれど、図面と納まりを見ていく事に特化した人を外注(派遣)で現場に入れるしかないという状況になります。
もちろん外注や派遣だから上手くいかないという話では全然ないです。
図面を検討していく事を専門にしている方にも優秀な方はたくさんいますし、逆にそうでもない方もたくさんいて、恐らくその比率はゼネコンとあまり変わりません。
全ての組織に言えることですが、どんなに優秀な人だけを選んで組織を作ったとしても、ガンガン働く人と怠ける人の比率は変わらないものですから。
ただ、そうした図面を専門に見ていく方というのは、基本的に現場を管理することなく、本当に図面に特化して見ていくことになります。
そうしないと物量がある図面関連の納まり検討が捌けないという現実があるので、これは仕方がない事だとは思いますが…
そうなると、現場をあまり見ない人が現場の納まりを検討するという、ちょっと考えると「?」という状況になってしまうんですよね。
そのあたりが納まりの検討が不足していて現場で問題になる原因ではないかと、私の個人的な意見ではありますが、そう思っています。
理想的な話をすると、図面を検討する方もきちんと現場を見て、現場がどのように進んでどう納まるのかについて詳しくなる必要がある、という事になります。
これは単純に納まりを検討する方のスキル向上という話になるので、そう簡単に出来るか、みたいな話ではありますが、方向性としてはそうなります。
もしくは現場を見ているゼネコンの社員が納まり検討に深く関わっていくか、ですが…
こうした検討や調整をキッチリと出来るゼネコンの社員は、大抵出世していく中でコストを重点的に見る立場になっていきます。
そうなると当然、納まりの事だけをやっている訳にはいかなくなるんですよね。
…と、このあたりの話は建築業界全般の問題になるので、ここで色々書いても仕方がないという事で、次回はちゃんと床と壁の取合いについての話に戻ります。