前回は巾木の基本納まりとして「出巾木」と「入巾木」がある、という話を取り上げて、その基本的な見え方を図面で紹介しました。
壁面に対して巾木の面がどのような位置にあるのか。
これが出巾木と入巾木を区分する決定的な違いという話でした。
ただ、こうした納まりと見た目の違いというのは、実際建物を利用している方にとってそれほど大きな違いには感じられないとは思いますが…
建築の納まりを検討していく中で、巾木を出巾木にするか入巾木にするかというのは、意匠設計者として結構気にする部分なんです。
と言うことで、今回はそんな巾木納まりのひとつである「出巾木」について、もう少し深く考えてみることにします。
出巾木は基本的に壁面よりも巾木面が出ている納まりになるので、壁仕上面をそのまま床まで下ろしていき、その上に巾木を貼っていく納まりになります。
こうした出巾木の納まりは大半の巾木仕上で適用されるので、巾木の納まりとしては一般的なものだと言えるでしょう。
□石巾木
石巾木で出巾木の納まりはこんな感じになります。
接着剤で巾木を固定していく納まりになりますので、石巾木の厚みと接着代によって出巾木の寸法が決まってくることになります。
上図のように出隅を少し面取りした方が見映えが良いかも知れません。
□木製巾木
次に木製巾木の納まりですが、床仕上材によって変わってきますが、床フローリング仕上との取り合いであれば下図のようなイメージになります。
以前も少し説明をしましたが、床がフローリングの場合には壁との間に伸び縮みの為のクリアランスを設ける必要があります。
それを出巾木によって隠す為に、巾木勝ち納まりではなく床勝ち納まりにしておく関係が、木製巾木の場合には結構あります。
□タイル巾木
タイル巾木の場合は壁がタイルになっている事が多いのですが、巾木の上が塗装仕上などになっている場合も時にはあります。
タイル巾木が上図のような納まりになっている場合、タイルの小口がしっかりと仕上がっている製品を採用した方が美しく納まります。
そうした製品ではない場合、タイルの小口はあまり綺麗な状態ではないので、ちょっと出巾木には向いていない仕上材になってしまうかも知れません。
□金属巾木
金属巾木の場合は下図のような関係になっています。
納まりとしては特に問題ない関係になっていて、これ以上説明することがないくらい一般的な納まりと言えるかも知れません。
上図は床仕上材が石になっていますが、長尺塩ビシートの納まりであっても、巾木勝ちの関係にしておく方が納まりは良いです。
□ビニル巾木
ビニル巾木の納まりは基本的に出巾木になっていて、床仕上材を施工した後に接着剤で取り付けていく納まりが一般的です。
納まり検討が必要ないくらいの仕上材ですが、埃がたまりにくいようにという配慮から、天端と床取り合い部分にRが付いている商品があります。
意匠設計者は「カチッとした納まり」というような表現をよく使い、Rが元も付いている製品を避ける傾向にあります。
そう言った意味で、上図の中では右側の巾木を好む傾向にありますが、埃がたまる事を考えると天端にはRが付いているの方が本当は好ましいです。
まあ見た目だけを考えればエッジが出ている方が見映えが良いですから、意匠設計者の言わんとすることはもちろん分かりますが…
建物を長いスパンで考えた時には、メンテナンス性などが重要な要素になってくる場合もあって、その場合は左図の方が意匠的にも優れている事になるかも知れません。