前回は床と壁の取合い納まりとは関係のない、施工者側に組織としての問題点みたいな変な話になってしまいました。
納まりを検討していく中で上手くいかない場合があって、その原因がどのような部分にあるのか、という話だったはずなのですが…
私はプロとして実務をする側に立っていて、建築の評論家ではありませんし、評論家的な立場で仕事をしたいとも思っていません。
なので、前回のように組織についての問題点を評論家のように書いても、解決策を提示している訳ではないので実は全然意味がないんですよね。
ちょっと乱暴な言い方になってしまうかも知れませんが、人間が運営している以上、何の問題もないパーフェクトな組織なんて存在しません。
前回書いた「ゼネコンの社員が少なくて人手不足」という問題を解決する為にゼネコンの社員を増やしたら、それはそれで別の問題が出るものですから。
そうなると「昔の方が良かった」などの話になってきて、結局完璧な組織にはたどり着かないものなんですよね、多分ですけど。
いつまでも評論家みたいな理想的な話をしている訳にもいかないので、今回はちゃんと床と壁の取合い納まりについての話に戻りましょう。
床と壁の取合い部分には一般的に「巾木(はばき)」と呼ばれる仕上材が取り付けられることになるのですが、まずはその目的について説明をしていくことにします。
巾木が存在する理由として考えられるのは以下の様な項目になります。
・意匠的にあった方が良い
・床掃除の際に壁が汚れる事を防ぐ
・床と壁の取合いを隠す為
上記のような理由で巾木が存在するのですが、それぞれの理由を見ていくと、それほど深刻なものではないことが分かります。
もちろん巾木は昔から建物の一部としてごく普通に存在するものですから、必要だからこそ存在し続けている訳で、私の考えとしては巾木は基本的にアリだとは思っています。
意匠的にあった方が良いという項目もありますが、余計なものをなくしたいから巾木をなしにしたい、という考えを持っている意匠設計者も中にはいます。
最近は少しこうした風潮が増えているような気がします。
ただ、こうした意見は少し極端に過ぎるので、実際に建物を運用する側の意見も取り入れた方が絶対に良いと思いますが…
なくてはならないものなのか? という視点で考えると、巾木は別になくても構わない部材という結論になるかとは思います。
もちろんあった方が納まりは良いですし、建物を運用する上でもあった方が断然楽なのですが、なくても何とかなる、というレベルの話ではそうなります。
ただし、巾木をなくすと壁は汚くなります。
モップをかけるとか床にワックスをするなどの作業をする際に、巾木があればそこにぶつかって終わるので問題ないのですが、巾木がないと直接壁にモップやワックスがあたります。
白い壁であれば当然モップの汚れが壁に付着するようになりますし、壁にワックスをつけても壁が綺麗になるどころか逆に汚れてしまうので、いずれにしてもあまり良い結果にはなりません。
設計者もプロですから巾木がどのような目的で付けられるかを知っているのですが、そうした使い勝手を分かっていながら、それでも巾木をなくしたいという場合もあります。
建物が出来上がった当初はシンプルに壁だけがあって美しい。
意匠設計者の狙いはそこにあるのですが、実際には数年もすると壁の下側がうっすらと汚れてくることになる可能性は高いです。
建物がどの時点で美しい状態になっていれば良いのか、という部分が意匠設計者と施工者とでずれている場合があるのですが…
この巾木の話はまさにそうした状況ではないかと思います。
このように、巾木をなくしたいという意匠設計者の意向がある場合もありますが、一般的には巾木を付ける納まりが多くなります。
次回は巾木の種類などについての話をしていくことにします。