前回は床コンクリート段差とLGS位置との関係について、検討がうまく行かなかった場合にどうなるか、という部分を考えてみました。
結論だけをここで書いてしまうと、最終的には納まる事になるけれど、そこまで納めるには時間とお金が余分にかかる、という話でした。
最終的に同じ納まりになるけれど、検討が甘い場合は適切な納まりにする為に余計な手間とコストが必要になり、それは結局見えなくなる手間とコストになる。
これは施工者としては非常に困る状況で、こうした状況が連続してくると、見えないところに時間とお金がどんどん使われていってしまいます。
もちろん膨大なボリュームがある建築工事の中で、全てを適切に検討して納めていくのは非常に難しいものがあります。
人間のやることですから、時には納まりについての知識があったとしても、間違ってしまうことは当然出てくる話で、ある程度は仕方がない部分もあります。
ただ、何も検討をしないまま施工をどんどん進めていくと、膨大な量の工事全てでこうした間違いが発生してくる事になります。
こうなってしまうともう悲惨な状態になってしまい、その場その場で適切な納まりにする為に、色々な対応をしていくしかない、という状況になります。
施工者としては利益が少なくなってしまう、もしくは赤字になってしまい、しかもそんなやり方では良い建物を造るのは難しい。
そうなると設計者も施主も喜ばないという、誰も嬉しくないプロジェクトになってしまうので、やはり図面での事前検討がどれだけ大切なのか、という話でした。
今回はこの床段差の納まりについてもう少しだけ話をしていく事にして、最終的に床段差と構造体との関係も含めたまとめ的な話をしてみたいと思います。
まずは以前紹介した、床コンクリートの段差とLGSとの関係の適切な納まりパターンを、もう一度ここで出してみることにします。
こうした納まり検討によって、最終的な床コンクリート段差位置が決まることになり、それが床梁の位置にも影響を及ぼすことになります。
梁の配置はある程度構造図によるのですが、床段差の位置にあわせて小梁の位置は微調整をかけることになるので、今回例に出した納まりで言うとこんな感じになります。
下階の天井裏スペースの事も考えていくと、梁のレベルについては下げないで済むのならむやみに下げない方が良いです。
そうした考えで納まりを検討していくと、上図のような納まり関係になってきます。
上図は鉄筋コンクリート造の納まりですが、鉄骨造の考え方も似たような感じになりますが、鉄骨の場合は下がった側に合わせた鉄骨梁レベルの方が納まりが良いかも知れません。
こうして構造体の位置とレベルが決まることになるので、床コンクリート段差の検討と言っても、それが様々な場所に影響を与えてくる、という事が分かってきます。
もちろん上記のようにぎりぎりを狙う納まりが良いかどうかは微妙なところで、後で変更があっても大丈夫なように、梁位置を少し逃げておくという考え方もあります。
ただ、どこまで逃げておけば後で発生するかも知れない変更に対応出来るかというと、それはもう誰にも分からない事です。
であれば、今の状態でしっかりと納まる位置で決めてしまう、と言う考え方でも、特に問題はないのではないかと思ってしまいます。
このあたりの判断は難しいところですが、少なくとも上図のような納まりにしておく事で、現状の壁位置であれば色々な取り合いがきちんと納まることになるのは間違いありません。
どこまで逃げを見ておくかの判断はさておき、まずはこうした納まりをきちんと押さえて色々な位置を決めていく、という流れを覚えておきましょう。