建築工事として天井に取り付ける器具、という括りで話を進めていく中で、前回は自動ドアの考え方と納まりについての話を取り上げてみました。
天井裏に自動ドアの駆動装置を入れたくなる場合があって、その際にはセンサーと点検口が天井面に必要になってくる、という話でした。
建物には必ずメインとなる出入口があって、その付近はやはり見た目を重視したデザインを検討していく事になるはずです。
そう考えていくと、どのような種類の建物であっても、自動ドアの駆動装置を天井に入れる検討が必要になる可能性はあると思います。
検討が必要な箇所数はそれほど多くはなりませんが、自動ドアの一部ではこうした検討と、点検口をどう見せるのかという話が出るかも知れません。
点検口の納まりに関しては、天井仕上材がアルミパネルになっていると意匠的には都合が良くて、パネルに見せたまま点検口にする事が出来るのでお勧めです。
自動ドアと天井との絡みについてはこのあたりで終わりにしておき、今回は天井に取り付ける器具として防煙垂壁についての話をしていくことにします。
先ほどもシャッターの項目で少し紹介しましたが、建物は万が一の火災時に建物利用者が安全に避難することが出来るように、色々な対応を考えているものです。
意匠的にはあまり取り付けたくない器具であっても、建物利用者の安全を確保するという目的がある以上、取り付ける事を前提として検討を進める事になります。
今回紹介する防煙垂壁もその対応のひとつで、火災時に発生する煙を一定の区画内に留めておく事を目的として設置されます。
煙は基本的に高い側に向かって上っていく動きになるので、天井から通常は500mmの高さで壁を設けることによって、一定の範囲内に煙を留める事が可能になります。
そうして留めた煙を空調設備で設置する排煙口によって、一定範囲内に留めた煙を建物の外部に排出するという流れになっています。
この防煙垂壁の範囲は設備にも大きく絡む為、建物の計画をする段階で、かなり細かい区分で防煙区画と呼ばれる区画が検討されることになります。
もちろん通常の壁でも煙を遮断することが出来ますから、垂壁ではなく壁でも防煙区画として成立することになります。
ただ、例えばオフィスビルの事務室や商業施設の売り場など、壁を設けることが出来ない大きな空間などでは、壁だけで防煙区画を形成することが難しくなってきます。
そうした場合に登場するのが防煙垂壁になっていて、天井から通常であれば500mmという寸法を確保出来れば、防煙区画として認められます。
防煙垂壁には大きく分けて2通りの考え方があります。
ひとつは常にそこに設置されている固定式で、もうひとつがシャッターと同じ考え方で火災時に下りてくることで垂壁として機能する可動式です。
どちらの場合でも天井に取り付けられるものになるので、天井の検討をする際にはきちんと納まりを押さえて盛り込んでおく必要があります。
まずは固定式ですが、これは不燃材であればどのような壁でも構わないので、よく採用されるのがガラスで出来ている防煙垂壁です。
当たり前の話ですがガラスは透明なので、あまり目立たないというメリットがある事と、スリムに納まる事からよく採用されます。
このガラス垂壁は軽量鉄骨天井下地に取り付けられる事になるので、位置をしっかりと押さえてそこに下地を流しておく必要があります。
ダブルバーが防煙垂壁に対して平行に流れているのか、それとも直交しているかによって納まりは少し違ってきますが、商品としてどちらの場合でも納まるように作られています。
もちろん通常のLGS下地+石膏ボードの壁を天井から500mmだけ設ける、という考え方でも問題はないですし、実際にそうやって処理されている場合も多いです。
ガラスの防煙垂壁がいかにも「防煙垂壁です」という雰囲気になっていて、それを嫌う意匠設計者もいるので、そのあたりは周囲の状況に合わせて使い分けていくしかありません。