前回はステンレスパネルの基本納まりについて紹介をしましたが、最終的な仕上については塗装もあります、程度の話しか出来ていません。
もちろんステンレスパネルの塗装仕上も美しく仕上がるのですが、せっかくステンレスを採用するのであれば、もう少し違う表面仕上を見せたいところです。
という事で、今回はステンレスの表面処理についていくつか代表的なものを挙げて、それらの仕上について簡単に説明をしていくことにします。
説明の際には写真もあわせて紹介していきますが、これらの表面仕上は色々な建物で採用されていますので、恐らく一度は見たことがあると思います。
なので「この表面仕上はどこかで見たことがある」などと思い出しながら読んで頂けると、読むだけよりも頭に入りやすいかも知れません。
□ヘアライン仕上
ステンレスの表面に同一方向の細かい傷を付けていく仕上で、髪の毛程度の細かい傷なので「ヘアライン」と呼ばれます。
ヘアライン仕上げをすることによって金属のつやを消して見せることが出来て、塗装に比べると金属の質感が多く出るという特徴があります。
ヘアライン仕上はステンレスの最も一般的な仕上なので、あまり気が付かないとは思いますが、恐らく色々なところで見かけているはずです。
ただし意匠設計者は「最も一般的な仕上」という表現を喜ばない場合が多いので、このヘアライン仕上はあまり意匠設計者には喜ばれない傾向にある気がします。
意匠設計者ではなくても、やっぱり「ヘアライン仕上はもっとも普通の仕上です」と言われるのはイヤですよね。
□バイブレーション仕上
バイブレーション仕上も基本的にはヘアライン仕上と同じく、髪の毛程度の細い傷をステンレスの表面に付けていく仕上になります。
しかしヘアラインと大きく違うのが、表面の方向性を一方向とするのではなく、色々な方向に傷を入れていくという点です。
どのような違いがあるのかは、恐らく写真を見て頂ければよく分かると思います。
どちらの仕上が良いかは別の話として、少なくとも表面の見た目としては非常に大きな違いがあることは間違いありません。
今までの経験上、意匠設計者はヘアライン仕上よりも圧倒的にバイブレーション仕上を好む傾向にある、という感じがあります。
ステンレスの表面仕上としては、やはりヘアラインよりもバイブレーション仕上の方が、ちょっとこだわっている感じが出るのかも知れませんね。
□鏡面仕上
ステンレスの表面を細かく研磨していくことによって、読んだままではありますが、鏡のように磨き上げる仕上を鏡面仕上と呼びます。
「鏡のように」という表現を使いましたが、これはもう比喩ではなく本当に鏡と同じ見え方になるので、非常に美しい仕上になってきます。
ただし、いくら鏡のように見せる状態が美しいからと言って、あらゆる場所で歓迎されるかはまた少し別の話になってきます。
例えば、間接照明として見えないところに配置した照明器具が、鏡面処理をかけたステンレスパネルによって映って見えてしまうなどの問題が時々あります。
鏡面仕上げは確かに非常に美しい仕上ではありますが、使いどころは慎重に判断していく必要があると思います。
これで金属パネルについての話は終わりです。
金属パネルは、建物の中で非常に多く採用される仕上という訳ではありませんが、説明としてはかなり長いものになってしまいました。
納まりとしてはそれ程難しい納まりではありませんので、検討する際には悩んでしまい困るようなことはそれ程ないと思います。
表面の仕上には色々なバリエーションがありますから、建物としてどのように見せるかを意識しながら仕上材を選定していく、という判断が重要になるはず。
このあたりの判断はやはり意匠設計者のものなので、色々な要素を絡めて色々と考えていくことが設計者には求められる訳です。
設計者としては色々な表面仕上のパターンを知っておき、もちろん自分の目で見ておき、その上で適切な判断をしていくことが求められる、という事になります。
もうすぐ壁仕上材についての説明は終わりそうですが、次回は壁仕上材としてビニルクロスを取り上げていくことにします。