前回はスチールパネルの納まりについていくつか例を挙げて説明をしましたが、その中でスチールカットパネルの納まりがありました。
重量があって施工しにくいという事と、結局は塗装仕上になるのでスチールでカットパネルにするメリットがあまりない、という理由で採用されにくい納まりではありますが…
溶融亜鉛メッキのリン酸処理を仕上として見せたい場合には、スチールカットパネルの納まりを選択することになる可能性が高いです。
という事で、今回は溶融亜鉛メッキのリン酸処理がどのような見た目になるのかなど、少し説明をしてみたいと思います。
まずは溶融亜鉛メッキとは何かという話から。
溶融亜鉛メッキとは、外部にスチールを採用する際に必要になってくる処理で、メッキ加工することによって錆びてしまうことを防ぐ目的があります。
通常のスチールに塗装をしただけでは、風雨に晒された状態の外部ではすぐに錆びてしまい、見た目が良くないですし、手摺などであれば安全面でも問題になってしまいます。
こうした事を考えると、外部に使用する金属はアルミもしくはステンレスが良い、という話になるのですが、コストを考えると全部をステンレスにするのは難しい場合もあるんです。
こうした理由から外部に鉄を使用する場面も結構あるのですが、見た目と性能という面から考えて溶融亜鉛メッキの処理は必須になってきます。
ただ、溶融亜鉛メッキ処理をした場合、見た目はかなりギラギラの状態になってしまいます。
外部の手摺とかでこのような見た目のものは結構あったかも…と思ってしまうかも知れませんが、それくらい採用される割合は高いと思います。
溶融亜鉛メッキのギラギラは年月と共に落ち着いてきて、最終的にはくすんだグレーになっていくのですが、最初はかなり派手な状態になります。
これではさすがに見た目が美しいとは言いがたく、意匠的には厳しい…という状況を改善するための対応として出てくるのがリン酸処理という事になります。
リン酸処理というのは溶融亜鉛メッキをかけた金属の上に処理をするもので、表面に皮膜つくる事によって見た目を落ち着かせる事が出来、塗装の下地にもなります。
リン酸の皮膜は表面にちょっとランダムな感じで結晶模様のようなものが入るので、この見た目が面白いという感じで仕上材として採用されることもあります。
これは好みの世界になってきてしまいますが…個人的にはこのリン酸処理状態を仕上として見せることにかなり抵抗があります。
結局建物を利用するのは建築の材料や仕上にそれほど詳しくない方になるのですが、そうした方がリン酸処理されたパネルを見て綺麗だと思うかどうか、というあたりに私は自信が持てません。
ただしこれはあくまでも好みの話ですから、意匠設計者の判断によってはリン酸処理を仕上の壁として見せることもあります。
このあたりは建物の全体的なイメージと合わせて考えないと変なので、その部分だけでどうこう言っても仕方がなく、雰囲気にマッチすれば全然おかしくはありません。
ただ、やはり好みの話である訳で、私としてはこれを最終仕上ですとは言いにくい気持ちになってしまうので、恐らく自分から積極的に採用はしないと思います。
この状態で仕上と呼ぶのであれば、メタリック塗装をかけたアルミカットパネルの方が私は美しいと思うので、コストの問題もありますがそちらを選びたいところです。
ちなみにこのリン酸処理にはもう少し濃いめの色もあります。
「黒リン酸処理」などと呼ばれていて選択肢のひとつになるので、最後にこの仕上を紹介してリン酸処理についての話は終わりにしておきます。
かなり黒っぽくなるので場所によってはこちらの方がマッチしますが、黒をうまく使っていくのは結構難しいものなので、使いどころはちょっと悩んでしまうかも知れません。
次回はステンレスパネルの納まりについて取り上げます。