壁仕上材としてタイルを選定する場合、標準的な部分の納まりは比較的シンプルになるので、角の部分をきちんと押さえておけば納まりとしては問題ありません。
という事で前回はタイルの出隅・入隅納まりについて紹介をしました。
そもそも出隅は専用のタイルが製品としてあるかどうかが問題になってきて、用意されていない場合にどうするか、という話でしたが…
タイルのカタログを色々と見る限り、国産のタイルを採用する限りは特に問題なく出隅タイルが用意されている、という傾向にあります。
イタリアから輸入しています、みたいなちょっと変わったタイルを選定すると、出隅が用意されていない場合もあるので、そのあたりはタイルの品番選定の時に気をつけておく方が良いでしょう。
現実問題として出隅タイルがない場合は意匠的に厳しくなる場合もあるので、そのあたりをトータルで考えておく必要があると思います。
こうした話は意匠設計者の業務になってくるので、施工者の立場であれば決まったタイルの品番を元にして出来るだけ綺麗に納める検討を進めていくことになります。
今回は施工者が検討していく細かい項目として、タイルが建具まわりでどのような納まりになるのか、というあたりについて考えてみることにしましょう。
まずは外壁タイルの場合。
外壁に取り付けられる建具は、窓であればアルミ製が多くなると思いますが、納まりの基本はアルミ建具でもスチール建具でもステンレス建具でもそれほど変わりません。
タイルとタイルの間は目地材になって、タイルと建具の間はシールになるという関係になって、図面で表現すると下図のような感じになります。
こうした関係が建具の周囲は全部まわることになります。
また、外壁であれば少し建具を外壁から面落ちさせる納まりが選択肢としてはあって、傾向としては意匠設計者はこちらの納まりを好みます。
「ダキ納まり」と呼ばれるこの納まりは下図のような関係に。
タイル面にあわせて建具を取り付けると、当たり前ですが同一面にタイルと建具があるので、何となく平らというか陰影がないイメージになってしまいます。
しかし建具を少しバックさせるダキ納まりを採用すると、ダキ部分が面落ちしてくる関係になるので、陰影が出来て良い雰囲気が出るんです。
ちょっと説明が下手で申し訳ないですが、とにかく雰囲気が良くなるので、意匠設計者は基本的にダキ納まりが大好きです。
施工者としても特にダキ納まりを否定する程の理由もないので、少しの手間で外観の雰囲気が変わるのであれば、意匠設計者の要望通りに施工をすることになります。
単純にコストの事だけを考えると、タイルの数量が増える事と、建具足元の水切りが大きくなるということになるので、若干のコストアップにはなると思いますが…
そのコストアップ巾はそれほど大きなものではないですし、そもそも設計図でダキ納まりと記載してあれば、コストも見込んでいるはずなので問題はないと思います。
ただしダキ納まりをする際には、壁下地の形状を開口部で少し複雑にしておく必要があって、鉄筋コンクリート壁以外ではちょっと難しいです。
ECPやALCが外壁の下地になっている場合は、余程のこだわりがない限りは外壁面+10mmが建具の面ということになります。
タイルと建具の間にあるシールが正面に見えるのか、それとも側面に見えるのか、という違いが面納まりとダキ納まりにはあります。
意匠設計者としては側面にシールを見せた方が目立たなくて良い、という考えもあるので、それでダキ納まりが好まれるという理由もあるんです。
外壁タイルと建具との関係は施工者が検討する項目になりますが、こうした基本的な部分の納まりは早めに決めておく方が良いです。
後で面納まりになっている建具をダキ納まりに変更する、という状況になると修正の手間が大変だし、間違えのもとにもなってしまいます。
まず「このプロジェクトでは建具まわりはこの納め方」という基準があると、色々な検討がその後スムーズに進むことになるのでお勧めです。
今回は外壁タイルと建具との関係で話が終わってしまったので、内壁のタイルと建具との関係は次回に続くことにします。