外壁にタイルを貼っていく場合に比べると、内壁にタイルを貼る場合の方が、タイルに合わせて壁下地を調整しないでも済んでしまう場合が多いです。
内壁のタイル納まりを検討する際には、タイル割付けと壁下地の位置のどちらを優先していくか、というあたりの話を前回は取り上げてみました。
内壁の壁下地というのは要するにLGS+ボード壁である場合が多いので、タイルを貼る為の下地であると同時に、他の部屋との間仕切としての役割も持っている事になります。
その間仕切位置をタイルの都合だけで調整してしまって問題はないのか、という事を検討していく必要がある訳ですが、あまり大丈夫じゃない場合も多いという事ですね。
それぞれの部屋は面積によって、必要採光面積だったり排煙量などが決められていて、適切な数量になるように調整をしています。
そうした色々な絡みがあるものに対して、タイルが綺麗に見えるかどうかという要素だけで壁を移動してしまうのは、ちょっと難しい部分もある訳です。
内壁の位置はタイル割付けだけを考えて移動することは難しい、という事をまずは認識しておかないと、LGS壁を後で壊すことになる場合があります。
これは納まりを検討していく中で非常に怖い事です。
建築だけの納まりとしては問題ないけれど、法的に排煙の吸い込む量が不足しているのでNGになってしまうとか、そうした事態になってしまう可能性がある。
特に施工者側で壁位置の移動を判断する場合などでは、法的な要素が後で問題になってしまう場合があり、結果として慎重な判断が必要だったという場合も…
内壁タイルの場合はタイル割付けに合わせて壁下地を調整しないでも済む場合が多い、というのはこのあたりに理由があるんです。
ただ、タイルの割付けをあまり気にしないでOKであれば、納まりを検討する施工者としてはかなり気持ち的にかなり楽になるかも知れませんが…
そうは言っても「何もタイルを考慮しなくても大丈夫」という訳ではなく、全体としてタイルの割付けはしっかりと意識しておく必要があるので注意が必要です。
今回はそのあたりの話として、内壁タイルの割付けと建具開口との関係について、もう少しだけ詳しく考えてみることにしましょう。
まずはサンプルとして一般的な内壁タイルと建具との関係を確認してみると…
まずはサンプルとして、内壁の最も標準的なタイルである100角タイルと呼ばれる98mm×98mmのタイルを想定してみましょう。
タイルと建具との間のシールを5mmと想定して、まずは基本的な平面納まりとして下図のような標準図が出来上がります。
建具を鋼製建具と考えた場合には、建具枠の見付(見えがかり)寸法は25mmで、戸当り部分の寸法は15mmが標準になります。
鋼製建具の有効開口が900mmと決まっている場合には、鋼製建具の枠外面で980mm、タイルの外面で990mmということになってきます。
しかしその寸法では、98mm×98mmのタイルとの関係とは合ってこないので、有効開口を守るのであれば、開口を少し大きくしておく必要があります。
具体的な寸法を考えると、タイルの外面寸法はタイル10枚分の開口として1002mmになってきて、現状では990mmだからそれを1002にすれば良いという事になり…
これはちょっと例としては今ひとつな感じになってしまいましたが、タイルの開口に合わせて鋼製建具の有効開口を900mmから912mmに調整する、という感じです。
どっちでも良いような例になってしまいすみません…
今回の例はちょっと微妙な感じになっていますが、実際にはこうした考え方をベースにして、鋼製建具の大きさを少しずつ調整していくことになります。
これをやっておかないと、鋼製建具の位置も決まらないという問題があります。
基本的には鋼製建具はタイルよりも先に取り付けることになるので、タイルの考え方を決めた上で鋼製建具を取り付ける必要があるんです。
単純な話に聞こえるのですが、実際にこれがきちんと出来ていない場合には、一度壁を壊して鋼製建具の取付けをやり直す場合もあります。
理屈が単純な分だけ、やり直しになった場合にはかなり寂しい気持ちになるので、シンプルだからこそ最初に納まりを決めておくことをお勧めします。
内壁タイルについての話はこれで終わりになるので、壁仕上材としてタイル納まりの説明もひとまずこれで終わりになります。
次回はようやく別の壁仕上材についての話が出来るという事で、金属パネルについて色々と説明していくことにします。