前回は外壁としてECPを採用した際に、その表面に金属パネルを取り付けるにはどのような納まりが考えられるか、というあたりについて考えてみました。
鉄筋コンクリートの壁とは違い、ECPはそれ自体に何かを強固に固定する事が難しい建材なので、こうした納まりを検討する際には結構悩んでしまうものです。
そこで登場するのが今回紹介する特殊なECPの納まりで、ここではノザワさんの商品名を出して説明をしてしまいますが、レールファスナー工法について考えてみましょう。
レールファスナー工法の大きな特徴は、通常のECPに比べてかなり特殊な形状の板を採用している、という事がまずはあります。
ただ、特殊な形状の板を採用していると言っても見た目は全然変わりません。
表面に見える部分が変わってしまうのは、恐らく意匠的にあまり良い事ではないはずなので、そこは変えないようにしているのだと思います。
では何が違うのかと言うと、断面形状が大きく違っていて、これがレールファスナー工法の大きなポイントになってきます。
上が一般的な590mmの板で、下がレールファスナー工法で採用する590mmの板になりますが、中空部分の形状が全然違いますよね。
この形状の違いがどのように利いてくるかというと、ボルトを押さえる板をこの斜めにあわせておくことで、ECPに対する固定用ボルトの引き抜き強度を高めているんです。
これによって、ECPに直接アンカー固定をする場合の強度不足問題を解消することが出来る、という点がひとつのメリットとして挙げられます。
次に考えなければならないのが、ECPが建物の挙動にあわせてロッキングしていくという点になりますが、これもレールファスナー工法によって解決します。
基本的にECPはロッキングする納めにするので、建物が動く時には、ECPが回転するような動きをすることになります。
しかしレールファスナー工法を採用した場合には、ECPに取り付けた金物が回転することによって、その金物に取り付ける下地は回転しなくなります。
ちょっと分かりにくい気もしますが、ECPがロッキングした場合でも、レールファスナー工法の下地が回転することによって、そこから先の下地はスライドするだけの動きになるんです。
イメージはこのような感じです。
金属パネルの場合はパネル同士のジョイント部分に固定用の隙間を設けているので、下地が回転してしまうのはまずいですが、スライドするだけであれば問題はありません。
もちろん下地の動きを吸収する為には、動いた時に金属パネル同士がぶつからないように隙間をある程度あけておく必要はありますが…
実際い金属パネルを固定する為だけでも最低12mmの隙間は必要なので、その隙間で充分動きを吸収することが出来るはずです。
ECPにどうしても発生してしまうロッキングという回転方向の動きに対して、レールファスナー工法を採用することによってスライドする動きに変えることが出来る。
これはかなり画期的な事ではないかと思います。
これは少し昔の話ですが、外壁にECPを採用してその上に石を張っていきたいと考えていたら、ECPの表層には石を張ることが出来なかった、という話がありました。
その当時はレールファスナー工法に石張りの実績がないから、という話だったのですが、今これを書いている時にノザワさんのカタログを見ると出来るようになっています。
技術は色々と進歩しているのですね。
外壁ECPの表面に金属パネルを張っていく具体的な納まり例として、レールファスナー工法についての話をしてきましたが、このあたりで話は終わりにしておきましょう。
次回はECPの表層納まりについての最後の話として、表面に石を張る場合の納まりについて考えてみることにします。