前回は押出成形セメント板(ECP)の表面仕上についての話ということで、素地の場合や塗装をする場合、そしてタイルを貼る場合などについて考えてみました。
表面に意匠的な目的で凹凸がついている商品もあって、その選択肢はかなり多種多様になっているので、意匠設計者としては選びがいがあると思います。
今回は引き続きECPの表面仕上材についての話を進めていくことにして、前回挙げた一式の中で最後に残った金属パネルの納まりについて考えてみます。
□金属パネル
金属パネルという表現はちょっと漠然としていて、実際にはどんな仕上なのかが伝わりにくい感じになっていますが、金属にもいくつかあるのでこうした表現をしました。
実際に多いのはアルミパネルとステンレスパネル、そしてスチールパネルになりますが、錆びの問題がある為、外部で使う場合はスチールパネルを採用する事はあまりありません。
重量やコストなどを考えていくと、アルミパネルが多いかなというイメージがありますが、統計をとった訳ではないのでこれはあくまでも個人的な感想です。
アルミパネルは色も自由に選ぶことが出来て、エッジも綺麗に見えるので、設計者が好む要素を兼ね備えている外装仕上材だと言えるでしょう。
こうした金属パネルをECP壁の表面に仕上げようとする場合、問題となるのが下地をどうするかという話で、このあたりの話をクリアしないと金属パネルを納めることが出来ません。
今回はECPについての話なのでここで詳しく金属パネルの納まりを紹介することはしませんが、パネルとパネルの境目部分に少し隙間があって、そこにビスで下地に固定という感じです。
ビスで固定する下地は鉄骨部材になっていて、その部材を壁や床などに固定して納めていくことになります。
ただし外壁がECPの場合は、ECPにアンカーで下地を固定することは出来ませんので、何らかの対応をしておく必要があります。
ECPの断面形状は上図のようになっているので、実際の厚みとしては非常に薄く、そこにアンカーを打っても固定することは難しいんです。
鉄筋コンクリートの壁であれば問答無用でアンカー固定が出来るのですが、ECPではそうはいかないという事で、このあたりが鉄筋コンクリートとの大きな違いだと言えるでしょう。
そうなると、ECPはあくまでも建物の止水ラインとして機能させて、意匠的にはその外側にきちんと下地を組んで金属パネルを施工していく、という考え方をする場合も多いです。
それならばECPに直接金属パネルの下地を固定する必要もなくなるので、強度的な心配をする事もなくなり納まりとしては良くなります。
ただし、止水ラインであるECPの外側に、仕上材を固定する為の下地をもう一度組む必要があるので、全体の壁厚としては結構大きくなってしまいます。
そうならないようにするには、やはりECPから金属パネルの下地を出しておく必要があるのですが、ここで問題になってくるのはECPの動きです。
先ほども書きましたが、ECPは建物の動きに追従して多少は動くことになるので、ロッキングという考え方で固定される事になります。
金属パネルもECPの動きにあわせて動いていくように検討を進めていく必要がある、という話になっていく訳ですが、これが結構難しいんです。
タイルであればECPの目地をまたがないようにタイル割付けをしていき、ECP目地に合わせたタイル目地にシールをしていく事でロッキングに対応することが出来ます。
しかし金属パネルの場合はECPよりも大きなサイズで製作することが可能で、意匠的にも細かく割っていくメリットはないので、どうしても1枚のパネルがECP割よりも大きくなってしまうんです。
この場合の納まりを検討していくと、それぞれのECPに金属パネルを固定していくしかない、という事になってしまうのですが…
それぞれのECPは個別に動く必要があるけれど、ECPをまたいで1枚のパネルを固定しているので動く事が出来ない状態になっている。
という事になってしまい、納まりとしては破綻してしまいます。
これを解消するにはちょっと特殊なECPを採用する必要がありますが、そのあたりの話は次回に続くことにします。