さて、前回までは施工者の考えとか理想的な仕事の流れなどについて色々と書いてみましたが、ちょっとと言うかかなり語りすぎてしまいました…
きっと仕事が理想的な流れになっていかないという話は、建築関連の仕事だけではなく、恐らくどの業界でも似たようなものではないかと思います。
このあたりの話はさすがにもうやめにして、今回は押出成形セメント板(ECP)の表面仕上げをどのように考えるか、というあたりを考えてみることにします。
押出成形セメント板(ECP)の表面仕上にはどのような選択肢があるかを考えてみると、以下の様な項目が挙げられます。
・素地
・塗装
・吹付塗装
・タイル貼り
・金属パネル張り
・石張り
ここではそれぞれの仕上材について簡単にではありますが、ECPとの関係を含めて説明をしていこうと思います。
□素地
「素地(そじ)」というのは本当にそのままの意味になりますが、ECPの表面をそのまま意匠的に見せるという考え方になります。
これが意匠的にどうなのかという意見もあるかとは思いますが、場所によっては素地でも充分という場合も結構多いのではないかと思います。
また、これはALCも同じ話ではありますが、ECPにも表面にパターンを設けて意匠的に見せるタイプの商品が豊富に用意されています。
こうした製品を採用すれば、ECPの上にタイルを張ったりしなくても、充分にデザインされた外壁として見せることが出来ます。
表面パターンのバリエーションはかなり豊富にありますから、選択肢の多さという意味ではかなり魅力的ではないかと思います。
ECPは基本的にコンクリート製品になりますから、見た目も何となくグレーのコンクリート的な見え方になってきます。
もちろん工場で製作する訳ですから現場で打設するコンクリートよりもはるかに綺麗な仕上がりになっていますが、コンクリートと並べてもそれほどおかしくないはずです。
□塗装・吹付け塗装
ECPの上に塗装をしたり吹付け仕上にすることも出来ます。
見た目としては、コンクリート系の色が見えてくる状態に比べて色があった方が綺麗に見えるのではないかと思いますが、このあたりは設計者の総合的な判断が必要でしょう。
どのような色を選定するかによって、外壁の見映えは結構大きく変わってくることになりますので、そこはやはり意匠設計者の出番ということになります。
□タイル貼り
ECPにタイルを張る場合には、表面が平らになっている板に接着剤でタイルを貼っていくパターンと、ECPの表面に凹凸が付いている板にモルタルで貼っていくパターンがあります。
厚みがないタイルは接着剤で貼っていくことが出来ますが、ある程度の厚みがある場合にはモルタルを利用する必要があるので、採用するタイルによって選定する板が変わる事に。
また、ECPの巾は590が基本になっているので、ECPの目地にタイルの目地を持ってくるための検討も必要になってきます。
ALCと同様に、ECPもロッキング工法が採用され、建物の動きに追従してそれぞれの板が動いていく事になるので、ECP目地をまたいでタイルを貼る訳にはいかないんです。
外壁に施工される表面仕上材は、剥離して落下したりすると人命に関わる大事故になってしまう可能性があります。
建物利用者が快適に建物を利用することが出来るように、という目的で設計者も施工者も色々頭を悩ませている訳ですから、仕上材によって人が怪我をするというのは本末転倒です。
そのような事故が起きないように、様々な技術や経験を駆使して納まりを検討していく事になり、特に高所に設置する仕上材については綿密な検討が必要になります。
外部に施工するタイルに関しては、常に剥離と落下の危険があるという事を念頭においた検討をしていくことが求められます。
こうした部分に関しては、納まりの検討が不足していてすいません、という話では済まされなくなる場合もありますから注意が必要です。
ECPの表面仕上げについての話は金属パネルを除いて終わりましたが、金属パネルの納まりは少し複雑になって長くなるので、次回に続くことにします。