前回はALC壁の表面にどのような仕上材が選定出来るかについて考えてみましたが、実際にはそれほどたくさんの選択肢がない事が分かりました。
外壁の仕上材で選定出来ないものがある、というのは意匠設計者にとって結構大きな問題になってしまいます。
もちろんタイルなどでも完全に採用出来ない訳ではないのですが、鉄筋コンクリートの壁に比べると少し条件が良くないのです、検討が必要になってくるという感じです。
仕上材の選択肢が狭くなる傾向にある要因のひとつとして、「そもそもALCは動く」という特徴があるのですが、今回はその特徴について考えてみることにします。
建物は基本的に地震など外部から受ける力によって少しずつ動きます。
動かないようにと建物を堅牢な造りをしたとしても、外部からかかる力に対して完全に動かない状態を作り上げるのは至難の業なんです。
実現不可能な状態を目指していくのは無理があるので「建物は外部からかかる力によって動くものだ」と考た方が自然だという事が言えます。
そう考えて外壁の納まりを検討すると、例えば外壁に採用したALCも建物の動きにあわせて少し動いていく方が良い、という事になります。
このような考え方があって、外壁で採用されるALCは建物の動きにあわせて少しずつ動くような納まりで取り付けられることになります。
ALCが動く考え方は二種類あって、ひとつが「ロッキング」と呼ばれる考え方で、もうひとつが「スウェイ」と呼ばれる考え方。
ロッキングというのはALCの上下にある取付け部が微妙に回転していくことによって、並んでいるALCが全体的に少しずつ傾いて動く納まりです。
一方スウェイというのは外壁のALC1フロア分を一枚の壁とみなし、建物の動きにはALC面の上部が建物に対してスライドしていくことで動きを吸収するという考え方。
割合としては圧倒的にロッキングの考え方が多く、ヘーベルなどではスウェイウォールの販売を中止している状況もあるので、スウェイについては考えなくても良いかも知れません。
ロッキングのイメージを見て頂ければ分かると思いますが、たとえ少しであっても、建物の動きに合わせて外壁が動くことになるというのは大きな話です。
こうして動いていくALC壁の上に何も考えずにタイルを張る、というのは色々な問題がある、という事は何となくイメージ出来るのではないかと思います。
もちろん外壁のALCに対してタイルを張っていくことが完全にNGという訳ではなくて、外壁として動くことを考慮に入れた納まりを検討する必要がある、という事です。
こうした状況があるので、鉄筋コンクリートの壁にタイルを張っていくことに比べると、ALCにタイルを張る方が難しいという事になる訳です。
ALCは600mm巾のパネルを連続して張っていくことで外壁を構成する事になりますが、ALCのジョイント部には必ずタイルの目地を持ってくる必要があります。
これは、ALCのジョイント部分をまたいでタイルを張ってしまうと、それぞれのALCが個別に動いた時にタイルが剥がれてしまう危険があるから、という理由があるからです。
さらに、こうしたALCの動きを考えると、ALCジョイント部分にはタイルの目地ではなくシールを施工する必要があることも分かってきます。
それぞれのALCが微妙に回転しながら動いていくので、タイルの目地もその動きにある程度追従していく必要があるので、それを考えるとどうしてもシールになってしまうんです。
こうした考え方はALCだけではなく、工場で製作してきたものを現場で張っていく納まりではよくあるパターンとも言えますが…
少なくともALCの場合は完全に固定する納まりはなくて、ロッキングという考え方で施工されることになるので、その上に仕上材を施工する際には注意が必要であることは間違いありません。
ようやくALC関連の説明が終わったので、次回は次の壁下地として押出成形セメント板(ECP)について取り上げていくことにします。