前回は建物の壁に求められる性能を紹介して、それぞれの項目について簡単に説明をしてきましたが、今回はその続きです。
□雨が建物の内部に入って来ない為の止水性能
これは建物の外壁に必ず求められる性能で、建物を利用する人が快適に過ごせるかどうかを左右する非常に重要な性能になります。
建物を利用する側の感覚からすると、建物の外で雨が降った場合でもその雨が建物の中に入ってこない、というのは割と当たり前の話ではあります。
しかし実際に建物を設計したり施工したりすると、建物の内部に水を入れないように止水性能を確保する為には、結構な労力が必要だということが分かります。
実際にはあり得ない話ではありますが、それほど深く考えずに建物を造ってしまうと、色々な場所で水が入ってくる危険があるものなんです。
建物を利用する方の「当たり前」を実現するのはそう簡単ではなく、その為に設計者は施工者は色々と悩んでいく必要がある訳です。
もちろん設計者も施工者も建物を造るプロである訳ですから、建物内に水が入ってこないのは当たり前、という前提もしくは信頼を守っていくのはプロとして当然だとは思いますが。
□外部の気温を建物内に影響させない為の断熱性能
建物の外部は季節によって様々な気温になっていき、当たり前の話ではありますが、夏は暑くて冬は寒い状態になります。
しかし建物としては、そうした外気温の変化によって室内の温度に影響が出るのは困るので、出来るだけそうした状態にならないように検討をしていく事になります。
外部の気温によって室内の温度が左右されないようにする最も効果的な方法は、夏には冷房をかけて冬には暖房をかけるという空調設備になります。
しかし空調設備を利用するにはコストがかかります。
自宅の場合で考えて見ればわかりやすいのですが、夏暑いからと言って一日中冷房をかけていると電気代が結構な金額になってしまいますよね。
あまり大規模ではない自分の部屋などでも電気代が少し気になったりするので、その規模が大きくなった場合はさらに気になってくる訳です。
これが規模の大きな建物になった場合には、空調にかかるコストというのはかなり大きな金額になっていくので、出来るだけ空調設備に頼らない環境をつくっていく必要があります。
建物の外部に面する壁に断熱性能を持たせることが出来れば、もちろん空調設備が不要になる訳ではありませんが、その効率を高めることが出来るようになります。
□火災時に人が避難する間だけ炎が周囲に回らない為の耐火性能
様々な人が利用する建物というのは、その建物を利用する人の目的に合わせて様々な機能を持っています。
例えばそれが病院であれば、停電しても医療器具の機能が停止しないような機能とか、決められた場所では酸素が出てくる機能などがあります。
もちろんこれらの性能はほんの一例に過ぎず、診察を受けに来る患者さんや入院している患者さんの為に様々な機能が用意されています。
こうした機能は建物の使用目的にあわせて用意されるもので、それぞれ建物の用途によって大きく変わってくるものです。
しかしもっと基本的な性能として、建物が万が一の事態になった場合でも対応が出来るようにしておく、というどんな建物にも必要とされる性能もあります。
それがこの耐火性能です。
万が一建物の中で火災が発生した場合には、その時点で建物に中にいる人は建物外に安全に避難していく必要があります。
しかし建物全体に火災がまわってしまった後では避難が非常に難しくなるので、建物全体に炎がまわってしまわないようにしなければなりません。
そうした目的で、建物には一定の区間毎に耐火性能を持った壁を配置しておき、人が避難する時間を確保しておく計画が必要になります。
その計画をする際に求められるのが、壁として一定の時間だけ炎を通さないようにする性能で、こうした性能を「耐火性能」と呼びます。