壁の下地として採用される材料を紹介していくと言うことで、前回は鉄筋コンクリート壁の特徴や下地としての性能について色々な話をしてみました。
鉄筋コンクリートの壁は色々な仕上材の下地になったり、あるいはそのまま意匠的に見せる納まりとして検討するなど、使用頻度の高い壁なのできっちりと基本を押さえておきましょう。
建物の外壁として非常に優れた性能を持っている鉄筋コンクリート壁ですが、これはRC造もしくはSRC造の建物で採用する場合がほとんどになります。
RC造やSRC造は柱や梁にも型枠を必要とする為、その間に壁を造る場合でもそれほど大きな手間にならない、という理由がそこにはあります。
S造の建物でも鉄筋コンクリートの壁を造る事は出来ますし、実際に鉄筋コンクリートの壁を造る場合ももちろんあるのですが…
その場合でも恐らく外壁を受ける為の立上り壁などが多いはずで、床から上階の床までの壁はあまり造らない傾向にあります。
S造の建物は床も鋼製型枠になっていて、木の型枠を組み立ててコンクリートを流し込んで解体、という作業があまりありません。
そうした状況がある中で、積極的に型枠を必要とする鉄筋コンクリートの壁を採用する事は、作業の効率などを考えるとあまりお勧めは出来ないんです。
それではS造の場合はどのような壁を造っていくのか、という事で、今回はS造の建物でよく採用される壁として「ALC」を紹介します。
ALCという呼び方にあまり馴染みがない方も多いと思いますが、旭化成建材の「ヘーベル」という商品名であれば聞いたことがあるのではないでしょうか。
当サイトでは特定メーカーの製品をお勧めする事はしませんが、テレビのCMなどで「ヘーベルハウス」という表現を聞いたことがある方は多いと思います。
「ヘーベル」というのは旭化成建材が販売しているALCの商品名で、当たり前の話ですがメーカーによってALCの商品名は色々と違ってきます。
他にはクリオンやシポレックスなどの商品名がありますが、メーカーによる商品名の違いをここで覚えておく必要は特にないので、ここはさらっと流していきましょう。
もちろん商品によっそれぞれ強みや特徴などが色々とありますが、ALCという材料が持っている基本的な特徴は変わることがありません。
ここではALCの特徴について色々と説明をしていくことにしますが、その前の「ALC」という名前の由来から調べていくことにしましょう。
こうしたアルファベット3文字言葉の例に漏れず、ALCというのはいくつかの言葉を並べた際の頭文字を取って作られた言葉になります。
Autoclaved : オートクレーブ養生
Lightweight aerated : 軽量気泡
Concrete : コンクリート
これらの頭文字をとって「ALC」となっているので、ALCとは「オートクレーブ養生された軽量気泡コンクリート」という意味合いになります。
オートクレーブという言葉は医療器具などでも使われますが、内部を高圧にした装置もしくは内部を高圧にした装置内での処理そのものを意味しています。
これらの内容を考えていくと、ALCというのは「高い圧力の中で養生された軽量気泡コンクリート」という事になるかと思います。
オートクレーブ養生をすることにどんな意味があるのか、という詳しい話をここでするのはやめておきますが、簡単に言うと「化学反応することによって強度が大きく向上する」という感じです。
ALCというのは軽量ではありますがコンクリートで出来ているのですが、通常の鉄筋コンクリートと大きく違う点は、工場で製作したものを現場で取り付けるという点にあります。
型枠と鉄筋を組み立ててコンクリートを打設する、というイメージは全然なくて、工場で決められた大きさの製品を製作して取り付けるという流れになります。
なので型枠工事が発生しないというメリットがあり、工場で製作して現場で組み立てるという鉄骨の考え方と同じく、施工スピードが速いという特徴があります。
こうした特徴を持っているので、ALCは特にS造の外壁として採用される場合が多く、その為の固定方法や納まりのバリエーションなどもかなり充実しているんです。
ここで改めてALCという建材が持っている特徴について考えてみると、大体以下のような項目が挙げられるのではないかと思います。
・鉄筋コンクリートに比べて軽量である
・工場で製作することによる工期短縮が目指せる
・工場で製作している為品質を確保しやすい
・壁内に気泡がたくさんある為断熱性能に優れる
・コンクリート製品なので耐火性能もある
ALCは気泡入り軽量コンクリートである訳ですから、軽いという事と、気泡があることによる高い断熱性能を持っている、という事は当然なのかも知れません。
実際に検討してみるとよく分かりますが、上記のような特徴を持っているというのは大きなメリットになりますので、様々なシーンでALCは採用されていく事になります。
次回はもう少しだけALC関連の話が続きます。