建物の壁に求められる様々な性能について、前回までの説明でいくつかの項目を簡単に説明してきましたが…
構造・止水性能・断熱性能・耐火性能など色々な性能が壁には付加される事になり、それによって様々な部屋がその用途によって機能するようになります。
今回で最後になりそうですが、引き続き壁の性能についての話を続ける事にして、遮音性能と間仕切りについて取り上げてみたいと思います。
□建物内もしくは建物外の騒音を遮断する為の遮音性能
建物を快適に利用するには、ある程度静かな環境というものが必要です。
どの程度の静かさが必要なのかは建物の用途によって少しずつ違ってきて、例えば図書館とショッピングモールでは圧倒的に図書館の方が静かな環境を必要としています。
そうした区分はあるものの、建物の中にはある程度外部の音を遮断する性能が求められる、ということに変わりはありません。
また、外部からの音を遮断して、なおかつ部屋から発生する音が外部に漏れないようにする、という目的の部屋も中にはあります。
身近な例で言えばカラオケルームなどは、室内の騒音(歌っている人以外はそう感じるという意味です)を室外に出さないようにする必要があります。
また、例えばオーケストラの公演などがあるホールでは、外部の騒音をかなりのレベルまでシャットアウトする必要があります。
そうした性能を確保しておかないと、そもそもホールとしての前提が崩れてしまうこともあるはず。
例えば開演前で指揮者が台に立って今から演奏スタート、という瞬間に、ホールの外から子供の泣き声が響いてきたりして、せっかくの緊張感が台無しになってしまいます。
また、建物の中にはどうしても機械室が必要になってきて、機械によっては定期的に音が発生するようなものもあります。
そうした常に発生する音が周囲の部屋に聞こえてくる状態は、決して建物として快適とは言えませんので、ある程度対処をしていく必要があるでしょう。
音によって建物が快適に使用できない、というような事にならないように、建物外周や該当する部屋の周りには遮音性能が求められる場合も多いです。
例えばシンプルな事務室であっても、快適に執務を行うことが出来るように、ある程度の部屋が静かであった方が効率が良いはずです。
こうして求められる性能には大小ありますが、様々な部屋で遮音性能が求められる場合が多い、ということが言えると思います。
特に先ほど例に挙げたホールなどでは、周囲の音が漏れて入ってくるとか演奏の音が外部に漏れるという状態では、部屋の使用目的を果たすことが出来ません。
そうなると建物の価値は半減してしまいますので、設計者としてはそうした状況にならないように、様々な技術を使って遮音性能を高めていく事になります。
□単純に空間を仕切って別の使い方をする為の壁
これはもう読んだままの性能で、特に耐火性能とか遮音性能などは付加されていなくて、単純に部屋と部屋を区切るという性能になります。
特に性能としてはない、という書き方をしましたが、例えば男子更衣室と女子更衣室を区切るなど、壁があるかないかというのは非常に大きな違いになってくるものです。
壁がなくてカーテンで更衣室が区切られているとかは有り得ないですよね。
しかし壁が存在していない場合はそうした有り得ない状況になってしまうので、どれだけ壁が重要な役割を果たしているかがこれで分かると思います。
最後の紹介になってしまいましたが、これが壁の基本という事になります。
部屋と部屋を仕切る性能がまずはあって、それに追加される性能として耐火や遮音などの性能がある、というような考え方になる訳です。
と言うことで、これを踏まえて納まりなどの話に進んでいく事にしましょう。