LGS下地+石膏ボード壁の性能は様々なグレードで用意されていて、建物の場所毎に適切な仕様を選んで区分していくことが設計者には求められます。
施工者はそうした区分をベースにして細かい納り検討を進めていく事になりますが、壁の仕様によってどれくらいLGS下地と石膏ボードとの関係が変わってくるものなのか。
今回はそのあたりについて具体的な数値とあわせて考えてみることにしましょう。
まずは最も標準的なLGS下地+石膏ボードの納まりから考えてみると、LGSの高さにもよりますが、とりあえずLGSは90形と仮定するとこのような感じになります。
石膏ボードは一般的な厚みである12.5mmを2枚張っている状態で、特殊な性能が必要ない場合はこの壁仕様で充分ということになるはずです。
場合によっては石膏ボードを2枚張るのではなく、1枚に減らす場合もあるかとは思いますが、そのあたりはコストや壁仕上などを考えて判断していくしかありません。
次に耐火性能が必要な場合について。
LGS下地+石膏ボード壁で耐火性能が必要な場合には、まずLGSを上階の床コンクリートまで伸ばしておく必要があります。
天井までで止めてしまった場合には、火事が発生した際に炎が天井裏を抜けてまわっていってしまうので、耐火性能もなにもありませんよね。
これがまずは大前提としてあるので、階高にもよりますがLGSのサイズは100形などが必要になる場合も結構あるはずです。
次にLGSに張っていく石膏ボードについても、当然のことですが耐火性能にあわせて決められた仕様があり、指定された石膏ボードを張っていく事になります。
やはり耐火性能を求められる壁には少し特殊な石膏ボードが採用される事が多く、21mmとか9.5mm厚でも硬質のボードなどが指定されます。
例えば吉野石膏さんの商品である「スーパーウォールA」という壁であれば、LGS下地に石膏ボード21mmと硬質石膏ボード9.5mmを両面に張ることが求められます。
具体的な納まりとしては上図のような感じになってきて、この壁仕様で1時間耐火間仕切として機能することになります。
この「スーパーウォールA」はあくまでも一例で、LGSの上に張る石膏ボードの組み合わせによってかなりたくさんの壁仕様が用意されています。
最後に遮音性能が必要な壁について考えてみます。
遮音性能が必要になるLGS壁は、耐火性能が必要な壁と同様に、上階の床コンクリートまでLGSを伸ばしていく必要があります。
これは耐火性能の場合とほぼ同じ理由で、天井下で壁を止めてしまったら天井裏から音が伝わってしまうので、上階床コンクリートまでとします。
耐火性能が必要なLGS壁に比べると、遮音性能をもったLGS壁の方が色々なバリエーションが用意されていて、遮音のグレードによって選択肢は結構あります。
こちらも一例を出してみると、同じく吉野石膏さんの「ハイパーウォールZ・WI」と呼ばれる遮音性能を持った壁はこの様な納まりになっています。
LGSが少しずれて配置されているのが分かるでしょうか。
遮音壁の多くはこうして壁同士をつなげないような納まりにしていて、さらにはLGSをたてる部分以外にグラスウールを敷き詰めていく事で遮音性能を高めます。
音の伝達はあくまでも空気の振動によって発生する訳ですから、振動が壁の向こう側に伝達しないような納まりにして遮音性能を高める、という考え方をする事になります。
こうしたLGSの配置を「千鳥」と呼び、先ほども書きましたが、ある程度の遮音性能が必要な壁であれば千鳥でLGS下地を組んでいく場合が多いです。
ちなみに上記の「ハイパーウォールZ・WI」は1時間耐火性能も持っているので、耐火性能かつ遮音性能が必要な際に採用される事になります。
こうした組み合わせはたくさんありますから、それぞれの場面で適した仕様を選定していくのは結構大変な業務でもあるんですよね。