「壁」という表現は色々な場所で使われています。
「超えられない壁」とか「言葉の壁」とか言うと、それは実際に存在する壁ではなく、両者の間にある大きな隔たりを表す比喩的なものになったりもします。
しかし建物に限定して「壁」というと、それは外部と建物内、あるいは部屋と部屋を隔てる目的で実際に作られる、垂直に建つ平板状のものを意味します。
説明しようとすると堅苦しい表現になってしまいますが、そんな表現をしなくても多分大丈夫で、壁と言えばいつも家や職場などで目にしているアレの事です。
壁に求められる性能には色々な種類がありますが、その前に、まずはそれぞれの場所を隔てるために建てられるという大きな前提があります。
外部と建物の中を隔てる為に壁が必要で、建物の中にある部屋同士を隔てる為も壁は建てられて、それに付随して色々な性能が求められます。
ということになるので、まずはその前提を押さえておきましょう。
壁に求められる性能には以下のようなものがあります。
・建物を支える構造としての壁
・雨が建物の内部に入って来ない為の止水性能
・外部の気温を建物内に影響させない為の断熱性能
・火災時に人が避難する間だけ炎が周囲に回らない為の耐火性能
・建物内もしくは建物外の騒音を遮断する為の遮音性能
・単純に空間を仕切って別の使い方をする為の壁
必要とされる性能としては上記のような感じになります。
私たちが目にするのは壁の表面だけなのであまり気がつきませんが、それぞれ求められる性能によって中身は様々な仕様になっていたりするんです。
このあたりは今後詳しく説明していこうと思っています。
壁というのは建物を利用する人の目に最も触れやすい位置関係にあるので、性能として必要という訳ではありませんが、見た目の美しさも重要な要素になってきます。
性能だけを満たしておけば後は何でも良い、という訳ではなく、見た目も美しくて必要な性能も当然持っている、という状態が理想と言えるでしょう。
そのあたりは当然設計者も分かっているので、意匠的にどう見せるかなどを考えながら壁の仕様などを決定していく事になります。
壁の表面というのは人の視線が集まりやすい場所でもあるので、壁の見せ方によって建物の雰囲気は結構大きく変わってきます。
そのあたりを意識しながら壁の意匠を決めるというのは、設計者にとって大きな検討項目だと言えるでしょう。
そうした見た目にプラスして性能を付加していくという感じになる、と言うことで、建物の壁として求められる性能について、それぞれの項目毎にもう少し詳しく説明をしていくことにしましょう。
□建物を支える構造としての壁
建物の構造についての話は以前のカテゴリで色々と説明をしてきましたが、RC造・S造・SRC造という大きな分類がまずはありました。
どの種類の構造であっても、基本的には柱と梁で構成されるフレームが構造体になっている「ラーメン構造」が主流になっています。
ただ、建物の規模が小さい場合には「壁構造」と呼ばれる構造も採用される場合があって、その場合は壁が建物の構造体になります。
壁構造のイメージは以下のような感じです。
建物の構造体として壁を造る場合には、基本的に鉄筋コンクリート造の壁が選択されることになり、それ以外の選択肢はありません。
壁構造の建物以外では、壁に求められる性能として「構造体であるかどうか」という区分はありませんので、実際に検討する機会はそれほど多くはないかも知れません。