床仕上材として石を選定した場合、実際にはどのあたりに気をつけて検討を進めていけば良いのか、というあたりを前回は考えてみました。
下地となる床コンクリートを事前に下げておく必要があって、それにあわせて取り合う梁のレベルも下げておく必要がある、という部分が大きなポイントでした。
このあたりの検討と判断を間違えてしまうと、後で結構大変な目に遭ってしまうはずなので、確実に対応しておく事をお勧めします。
こうした床石仕上の納まりについて検討をしていくと、石の厚みによって若干納まりが変わってくることが分かります。
石というのは石の巨大な塊をスライスして板状にしていくものですから、限度はありますが、指定した通りの厚みに加工することはある程度出来てしまいます。
しかし薄すぎると人が通行した際に割れてしまう危険があるし、無駄に厚すぎると当然コストは上がっていく方向になるという悩ましい問題があるんです。
そうした色々な問題点やコストなどを考えると、床の石は20mm~30mm程度が適切ではないかと考えられています。
一般的には、設計者は後々問題にならないように少しでも厚くしたくて、施工者はコストを少しでも安くしようとして薄くしたいという関係になりがちです。
もちろん設計図に記載されている石の厚さで施工者も見積りをしている訳ですが、別に石を薄くしてその差額で利益を出そうとかいう話ではありません。
施工中に変更が色々ある中でコストの増減をしない場合も結構あったりするので、性能が同じになるのであれば出来るだけ最小限にしたいと施工者は考えるものなんです。
次に床石の目地割りについて考えていきます。
石というのは原石のサイズとか運搬や加工や施工などを考えていくと、800mm×600mm程度の大きさをとるのが限界です。
そうなると自然とたくさんの石を床に敷き詰めていくことになる訳ですが、そうして敷いていった床石と床石の間にある隙間の事を目地と呼びます。
目地は上記のように見えてくるものですから、意匠設計者であればその目地ラインを何かに合わせるとか目地の間隔を統一するなど、色々調整したくなるものです。
実際に検討してみるとなかなか思ったようにいかないもので、事前にきちんと検討をしないと上手くいかないことがすぐに分かると思います。
上野にある法隆寺宝物殿を見に行くと、壁を含めて石がふんだんに使われていて、目地の位置が本当にきちんと考えられている事が分かります。
このような状態にもっていくには設計段階からモジュールをきちんと考えていく必要があるので、施工段階であわてて検討をしても完璧には届かない訳ですが…
例えば床石の目地を外壁のアルミ建具方立芯に合わせるとか、手摺の割付けを石の目地に合わせるとか、そうした検討が色々と必要になってきます。
施工者としても目地の位置が決まらないと石の大きさが決まらないですから、工場で加工を進めることが出来なくなるという問題もあり、目地の位置は早めに決めたいと考えます。
目地の巾は一般的には5mm程度になるので、その5mmの目地ラインがどのような見え方になっていくのかを、出来るだけ早めに図面で検討していく必要があります。
床仕上材の石納まりについてはこんな感じです。
ポイントは床を下げておく必要があるという部分で、その対応さえきちんとしておけば、あとは何とかなるというのが正直なところです。
石の目地をどう計画していくかは、完璧にやろうとするのなら施工段階で悩んでも遅いですし、現状に合わせて割付をするだけならもう少し後でも大丈夫なはず。
いずれにしても目地割りは壁の位置が確定しそうなタイミングを見計らっていくので、ある程度時間的な余裕はあるはずで、後でじっくりと進めれば良いと思います。
とは言っても目地割りには結構時間がかかりますから、ある程度構造体の検討が一段落したらもう進めた方が良いとは思いますが…
設計者も施工者も忙しいので、そうそう理想的には進まないのでもっと後になるはずです。