床コンクリートに直接張っていく、あるいは床コンクリートに直接塗っていくタイプの床仕上材について今まで色々と説明をしてきました。
長尺塩ビシートとビニル床タイル、タイルカーペットとカーペットと、いずれも床コンクリートに直接接着剤で貼っていくタイプでした。
床の基本納まりパターンとしては、やはりこうしてコンクリートに直接貼っていくという考え方が最もシンプルで納まりが良いという事なのでしょう。
素材や色や性能などが本当にたくさんあって、意匠設計者の選択肢としては本当に色々ありすぎて迷ってしまうくらいだという事が分かってきました。
こうして様々な種類が用意されている床仕上材の中から、色や柄を含めてそれぞれの部屋に適したものを選定していくのは設計者として楽しい業務ではあることは間違いありません。
ただ、こうした選定はもちろん床仕上材だけではなく、ありとあらゆる仕上材についてきちんと検討して決定していかなければならない、というのは結構大変な業務でもあります。
しかも時間が限られているという条件があって、なおかつ施主も納得するような選択である必要もあるので、仕上材の選定業務は決して楽しいだけでは済まないものです。
実際は何のしがらみもなく自分の好きなように仕上材を選定出来ることなどなく、色々な人に確認をとっていくなどの調整が必要になったりもします。
本当に自分で自由に仕上材を選定出来るのは、恐らく自宅を建てるとかリフォームする時、つまり自分が施主になる場合だけではないかと思います。
もちろん一般的な施主であれば、かなりの割合で意匠設計者に色などの決定を任せるものではありますが、大きな部分についてはやはり確認が必要になってきます。
こうした「施主に仕上材などを説明する必要がある」状況になる場合がほとんどなので、意匠設計者は説明が上手な人が多いです。
まあ設計者には必須のスキルですし、毎日設計者としての仕事をしていれば自然と鍛えられる訳ですから、当然のことかも知れませんが。
…と、ちょっと違う話になってしまいましたが、話を戻します。
今回からは、床コンクリートに直接貼っていく床仕上材ではなく、床コンクリートのレベルを下げて納める必要がある床仕上材について色々と説明をしていくことにします。
まずは床に石を張る場合について色々と説明していきますね。
床に石を張るというのはちょっとイメージしにくい方もいるかも知れませんが、石と言っても道に転がっている石ころのようなものではありません。
建築関連の仕上材としての石というのは、山から切り出して来た石を薄い板状にスライスして表面加工をしたものを指しています。
イメージはこんな感じ。
ちなみに上記の写真は上野にある法隆寺宝物館。外部と内部の石目地を建具方立にあわせているのが分かります。
とても美しい建物です。
「石」と一口に言ってもそこには幾つかの種類があって、その種類によって色や柄や仕様などが違ってくることになります。
仕様というのは石の硬さや水の吸い込みやすさなどを指していて、どの程度の硬さを持っているかによって床に適した石か壁に適した石かが変わってきます。
今回紹介していくのは床に施工する為の石になりますから、人が何度も通過した時にすり減らないことが床材としての条件となり、自然と硬い石を選定していくことになるかと思います。
いくら色と柄が美しい石であっても、柔らかい石を床に張ってしまうと、建物を運用した段階であっという間に床の石はすり減ってしまいます。
そうなってしまうと、最初がどんなに美しい仕上の石であっても、結局は全然意味がないことになってしまうので、見た目の美しさとあわせて耐久性も見ていく必要があります。
耐久性が高い石にはどのようなものがあるのか、というあたりの話は次回取り上げることにして、今回はまず床に石を張る場合のイメージを掴んでおくことにしましょう。