浴室や厨房など、アスファルト防水が必要になるような部屋では、床に常時水またはお湯が流れている場合が多くなります。
だからこそ下階に水が漏れないように防水処理が必要になる訳で、床に流れている水をきちんと排水する為に排水溝が必要になります。
こうした排水溝の納まりを考慮した上で、床コンクリートをどの程度下げていくかを決める必要がある、という話を前回は紹介しました。
排水溝の必要な深さは部屋の広さ、もっと言えば排水溝がどれだけの長さになるのか、つまり排水目皿までもっていく勾配がどれくらいの長さになるのかによって決まります。
例えば上図のような平面図の場合、排水溝の長さは20mあって、溝の中にある排水目皿が1箇所だとしたら勾配の長さは10mという事になります。
10mの排水溝できちんと勾配を付けようとした場合、勾配が1/200であれば高低差50mmが必要になってきて、水上部分の断面図はこのような関係になります。
排水溝の上にはグレーチングと呼ばれる網状の金物が敷き込まれる事になり、グレーチングの厚みを考えるとほとんど余裕がないことにすぐ分かります。
床仕上レベルも排水溝の天端が水下になる訳ですから。FLから考えると少し水勾配で下がってくることになってきて、さらに条件が悪くなっていきます。
溝の中の勾配で先ほど1/200と書きましたが、これは水勾配として本当に最小限の傾きで、これ以上勾配が緩いと水は流れません。
こうした納まりを考えていくと、実際には床コンクリートを150mm下げていたとしても、それ程余裕がある納まりではないことに気がつきます。
もしこうした排水溝の深さをあまり考えなくても良い場合であれば…
アスファルト防水15+押さえコンクリート70+タイル15程度になるので、100m下がっていれば問題ないという感じにはなります。
ただ、どうせ床コンクリートを下げておくことになるのだったら、別に-150mmでも-100mmでもあまり大幅にならない限りは全然問題はないはずです。
しかしぎりぎりを狙って床コンクリートの下げレベルを-100mmとした場合、少し条件が悪い区なると勾配がとれなくなるなどの危険性があります。
床コンクリートの下げ寸法はどちらでも納まりとしては大差ないにも関わらず、場合によっては納まらない可能性がある、というのは納まり検討としてはNGだと言えます。
ここで無駄にぎりぎりを狙うよりも、ある程度余裕を持っておいた方が、施工精度もありますから納まりとしては良いのではないかと思います。
また、上図はタイル貼りの納まりと言うことで、浴室をイメージした断面図になっていますが、もし厨房の床納まりであれば、床仕上材は恐らくタイルではなく塗床になると思います。
その場合はタイルの分だけ仕上代が少なくて済みますから、最低限床を下げておく必要がある数字は少なくなっていく事になります。
とは言っても、厨房というのは色々な調理器具が並ぶことになって、排水溝も複雑な形状にレイアウトされることが多いです。
そうなると排水溝内の勾配も大きめに必要になったりする可能性があるので、やっぱりそれなりに大きめに床コンクリートを下げておいた方が無難という事になります。
このように、排水溝関連の納まりは結構複雑になることが多いです。
・排水溝を水下にした床仕上天端レベルの検討
・排水溝の中に必要な勾配の検討
・それによる排水溝の必要な溝の深さ設定
これらの条件をクリア出来ているかを検討する事になる訳ですけど、ぎりぎりを狙っていくメリットはあまりないので、少し余裕をもった下げ寸法にしておくのが正解だと思います。