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設備の理想が建物の理想とは限らない

前回は少し基本的な考え方を整理してみるという事で、建物にはなぜ設備のスリーブが必要になるのか、というあたりを考えてみました。
設備的には階高を高くすればスリーブが必要ない状態になって良いのですが、建物全体をトータルで考えるとそれは理想とは言えないという感じでした。

そうした考え方で設計を進めていくと、天井裏のスペースは設備が納まる必要最小限として、その結果をもとに階高を設定していく、という考え方にたどり着くことになります。
結局はあまり面白くない当たり前の結論になってしまいましたが、恐らく今はこうした考え方で階高を設定している建物がほとんどではないかと思います。

なぜそう思うのかというと、その考え方が最も効率的だからです。

階高を抑えて梁スリーブとした例

効率的な考え方で階高を設定した場合には、恐らく設備的な要素を全部梁の下に通していくことは難しくなってくるはずです。
設備配管などは梁の下を通すのではなく梁の中を通した方が、階高という観点から考えると効率が良いですから、自然とそうした考え方になっていくことが予想されます。

このような考え方から、比較的梁のサイズを小さくすることが出来るSRC造であっても、恐らくはSRC梁にスリーブを設ける必要性が出てくるはずです。
タイミングとしては鉄骨を工場で製作する前の段階で、設備のルートをある程度検討して、スリーブ位置やサイズを決定していく、という感じで検討は進んでいきます。

わざわざ構造体であるSRC梁に孔をあけてまでして、なぜ設備配管を梁に通していくのか、なぜ梁の下を通していくという考え方をしないのか?
というあたりの一般的な話を、設備としての理想的な形状がどうなのか、などの話を交えて色々と考えてきましたが…

設備的な納りが良くなったとしても、それで全ての納りが良くなる訳ではないんですよね。
設備の納りだけではなく、建物の高さや床面積などをトータルで考えた時には、どうしても階高は低く設定される方向になり、その為にスリーブが必要になってくる。
これはもう仕方がない話だと思います。

純粋に構造体のことだけを考えれば、構造体である梁に孔をあけてしまうスリーブなど存在しない方が良いに決まっています。
しかし階高とか梁のサイズとか天井高などの要素を色々と考えていくと、スリーブなしという考え方はかなり非現実的である事が分かります。

もちろん構造設計者もそれはきちんと分かっていますから、スリーブを設けた場合の補強をどうするかとか、スリーブを設けることが出来る範囲などを構造図で示しています。
そうした構造的な決まり事を厳守しながら、出来るだけ有効な位置にスリーブを入れておく為に色々と検討を進めることになる訳です。

梁に対して設備スリーブを入れておく理由はこのような感じになっていて、スリーブを入れておかないと後で設備納りが大変なことになってしまいます。
間違いなく天井高をごっそりと下げていく検討をすることになってしまい、想像が付くかとは思いますが、そうした検討は全然面白くありません。

鉄骨を製作する段階で天井裏の設備納りが全て決まっているかというと、まず間違いなくそんなに上手くいっているはずはありません。
細かい位置が決まっていないにしても、配管が通ることは確実という状況もあるかと思いますが、そうした場合はとにかくスリーブを入れておくことが重要になる、ということを覚えておきましょう。

色々検討してみたければ結局はスリーブがないと建物として成立しなくなるという事で、次回はSRC造のスリーブ納まりについての話に進んでいきます。

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