具体的なSRC梁のスリーブ納りですが、S造の場合やRC造の場合と違ってくるのが、鉄骨にも鉄筋コンクリートにも孔をあける必要があるという点です。
鉄骨と鉄筋コンクリートの両方に孔をあけるということは、つまりその両方に補強を入れておく必要がある、ということがまずはあります。
鉄骨部分に孔をあけてその補強をする納りを考えると、プレートを入れたり既製品の補強リングを入れたりすることになる訳ですが…
こうして鉄骨に補強をしただけでは、SRC造ですから当たり前ですが、結局は鉄筋コンクリートの中に埋まってしまうことに。
もちろんこれではスリーブの役割を果たしませんので、組み合わせとしてRC造の際に使うボイド管などを入れて納めていくことになります。
SRC造というのはS造とRC造の組み合わせですから、スリーブの補強も両方のやり方を組み合わせていくことになるのは自然なことだと思います。
ただ、こうしたやり方では施工の手間がかかってしまうので、出来るだけ手間を減らした納りにしたいと考えるのが施工者です。
そうして検討を進めていく中で、ボイド管を入れる代わりとして、工場で鋼管を鉄骨に取り付けておくという考え方になるかも知れません。
鉄骨に取り付けてくる鋼管をどこで止めておくのかを考えると、型枠の面との関係をゼロにするのは施工精度の問題もあるので避けたいところ。
とは言っても型枠から逃げすぎてしまうとコンクリート打設の際に、隙間からスリーブの中にコンクリートが入ってしまう恐れがあります。
そのあたりのバランスを考えると、10mm程度鋼管をバックさせておく、という納りにしておくのが一般的ではないかと思います。
この考え方は鋼管でもボイド管でも同じで、型枠とのクリアランスをゼロに設定するのは、逃げが利かないので避けた方が良いでしょう。
断面図で表現するとこんな感じですね。
この状態でコンクリートを打設すると、10mmとは言え隙間が空いている訳ですから、型枠を解体した際にはスリーブが見えていない場合がほとんどになってくるはず。
でもボイド管やスリーブはきちんと入っていますから、その部分のコンクリートは非常に薄い状態になっていて、少し叩けばコンクリートは除去出来ます。
私があまり鉄骨鉄筋コンクリート造の経験がなかった頃に、梁にスリーブを入れておいた部分を見に行ったらスリーブが全く見当たらなくて結構焦ったことがあります。
でも実際には少しコンクリートがあるだけだったので、次に見に行った時には綺麗にスリーブがあって、人知れず安心したという…
昔の話ではありますが、知らないというのはやっぱり怖いことだという話でした。
建築というのは奥が深いもので、知識がないことで発生する問題というヤツは、色々な経験を積んでいったとしてもなかなかなくならないものです。
経験と積んで知識も増えている今現在でも、似たようなことを時々やっていますから、この先もきっと同じような感じなのだろうと思ってしまいます。
まだまだ私の知識と経験が少なすぎるという可能性もありますが…
建築関連の仕事を辞めてしまうまでは、やはり自分に足りない経験を積むように心がけていき、少しでも知識を増やしていく必要があるのでしょう。
でもそれくらい奥が深い仕事の方が面白くて良いのかも知れません。
…と言うことで。
鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)の納りについての話は、ひとまずこのくらいにしておき、次の話に進んでいこうかと思います。
先ほども書きましたが、建築関係の知識というのは非常に奥が深いものですから、これまでの説明でSRC造の全てを網羅したとはとても言えない状態です。
それでも、まずは一般的な知識だと思われる範囲について、ある程度までは説明出来たのではないかと思っています。
そこからさらに細かい説明をしていくかどうかですが…
そもそも、そうした説明にニーズがあるかどうかは微妙なところですから、まずは基本的な話を一通りした後で考えることにします。
ということで、そろそろ仕上関連の話に進んでいくことにしましょう。