やることが多くて時間が限られている場合には、業務に優先順位を付けていく事と、必要そうに見えて実は不要な業務をやめる事が重要になってくる。
前回はそんな話を取り上げましたが、ちょっと粗っぽい話ではあるので、あまり理想的な話とは言い難いものがあります。
もちろんそうした忙しさを経験することは無駄ではありませんが…
スキルアップの為にそうした作業を進んで引き受けると、限界を超えた作業をこなすことがどこか当たり前になってしまうという危険があります。
そうなると今まで考えていた「限界を超えた仕事量」が今後の「標準的な仕事量」になって、その標準に対してもう少し上乗せした仕事量を与えられることに。
もちろんこうして鍛えられることで仕事に関するスキルは高まっていく訳ですから、頑張ってなんとかこなせる量にプラスした仕事量を与えられるのは、ある程度仕方がないとは思います。
しかしそうした考え方にも物量的な限界がありますから、それを超えてしまった場合には、スキルアップをする為に有効とは言えない状況になってしまいます。
こうした話はどこかで働く方の考え方を無視する瞬間があるはずなので、全面的に賛同できないものがありますよね。
人が少なくて与えられる仕事量が多いという問題は、設計者であっても施工者であっても、多かれ少なかれ抱えている問題だと思います。
それに対して全力でぶつかって出来る限りの仕事をこなしていくのか、それとも自分がこなせる仕事だけしかやらない考え方を貫くのか。
この選択は仕事をしているそれぞれの方が決める事だと思いますが、周囲の環境との兼ね合いもあったりするので非常に難しい問題です。
自分がこなせる以上の仕事はやらない、という選択肢を選べるかどうか…今の建築業界を見ている限りはなかなか難しいと残念ながら感じてしまいます。
自分でどこまで仕事を受け持つのか、自分のキャパシティを超えた仕事量に対してどのようなスタンスで仕事をするのか。
というあたりの話は明確な正解がありませんので、それぞれ個人で仕事をしながら自分のスタンスをつくりあげていくしかない、というのが現実です。
私はどちらかと言うと限界に挑戦してしまいがちなのですが、挑戦すること自体にはそれほど大きな価値がある訳ではありません。
そこまで限界に挑戦しなくても良い状況をつくり、それぞれがある程度余裕を持って仕事を間違いなくこなしていく環境の方が効率は良いですから。
とは言え、もう少し現実的な話をすると、コストを意識した時にはどうしても人員不足状態に陥りがちで、個人のキャパシティを超えた仕事量を課されることも多いです。
それに対してどう反応するのがプロとして正解なのか、という話は、これを書いている私も残念ながら正解を持っていない問題ですので、本当に難しい話だと思います。
こうした建築業界の雰囲気を知っている私としては、このままでは若い人が少しずつ建築という面白い仕事から離れていってしまうのではないか、と心配になってしまいます。
私が建築業界の行く末を心配しても仕方がないのですが、もう少し何とか変わっていかないと、本当に人材が減ってしまうのではないかと。
当サイトでは、建築関連に興味を持っている方にとって有益と思われる解説をしていくよう心がけていますが、ひとりひとりに与えられる仕事量の問題については解決する術を持っていません。
当サイトに出来る事は、少なくともきちんとした知識を身につけることによって、出来る限り仕事をスムーズに進められるようお手伝いをすることだけ。
その後にくる仕事量の話については問題提起することしか出来ませんが、これを読んでいる方もぜひ一度真剣に考えてみることをお勧めします。