建築関連の業務を覚えていくには、覚えようとしている本人がその知識に対して飢えている状態出あることが望ましい、という話を前回は取り上げました。
そうなればスポンジが水を吸収するような勢いで知識を吸い上げていく事になるので、成長のスピードは非常に速くなるはずです。
ただ、そうした意欲を打ち砕く問題として、一人一人に膨大な作業量が与えられる可能性がある、という残念な話もあわせて取り上げました。
実際の仕事ではそうした状況になる場合もあるので、今回はそうなった場合にどうなっていくのかについて考えてみる事にしましょう。
現実として膨大な作業量と限られた時間という状況に陥ると、出来るだけ早く、しかも手間をかけないで残った仕事を片付けようという気持ちになります。
そうした気持ちにならないと対処が出来なくなる、という表現の方が適切かも知れませんが。
そうした気持ち仕事をしていると、当然ベストと思われる選択をするのは難しくなるのですが、現実を考えるとそうやって仕事をこなしていくしか選択肢はない状態です。
そのような仕事をすれば当然のことですが、後々で大きな問題として自分に戻ってくる可能性もまた大きくなってくるのは仕方がありません。
SRC造の検討で言えば、鉄筋の為に鉄骨に孔をあける必要があるけれど、あまり時間がないから深く検討をすることが出来ないという感じです。
そしてその結果、現場で鉄骨を建てて鉄筋を施工しようとした際に、鉄筋を通すべき部分に孔がないとか、余計な所に孔があるなどの状態になってしまう訳です。
これはあくまでも一例にすぎませんが、充分な時間が用意されていないというだけで、普通なら問題なく出来る事が全然出来なくなる場合があるんです。
理想的な状態と現実との間を何とか調整していくのが仕事、という意見もあるとは思いますが、それにも限度というものがないとおかしい、という話です。
やたらと忙しく仕事をこなしているけれど、結果としては今ひとつとか失敗みたいな感じになってしまうのであれば、そんな仕事は面白くないですよね。
人は基本的に相手に認められる事で喜びを感じる生き物ですが、失敗ばかりで認められない状態が続く事が精神的に良いはずはありません。
しかし現実としてそうした状況になりやすいのですが、これはなぜなのか、というあたりをじっくりと考えてみると…
作業量的には10人の人員が必要な場面でも、なんとか8人で頑張れば人件費が有利になる、というような経営者的な考え方が原因になっている気がします。
もちろん数字的にはそれが正解ですし、企業ですから利益を出さなければ存続する事が許されないという事情もあるのは事実です。
先ほどの例で言えば、残った8人の体力と意欲を食いつぶした結果として人件費が浮き、それによってしか企業が存続できないのかも知れません。
しかし、もしそれが事実であるのなら、そこまでしてその企業は存続する価値があるのか、という話になってくるような気もしませんか?
そうやって働く人の意欲と体力を食いつぶす事でしか存続出来ないのであれば、そうした企業にはあまり価値がないという事ではないかと。
もちろん10人配置すればそれで皆が意欲を持って業務に携われるかというと、それも現実は少し違うというのが仕事の難しいところです。
従業員の事を考えすぎると企業として利益が継続して出せず、結果として企業が倒産して従業員に大きな影響を与えることになるのか。
あるいは企業が存続することを第一にして、従業員皆に少しずつ我慢というか無理を強いるような体制を作っていくのか。
もちろん企業の存続と従業員の生活が両立出来るのがベストではあるのですが、そのベストは今の建築業界で実現するのは難しい場合もあるのかも知れません。
ちょっと納まりとは関係ない変な話になってしまいましたが、次回にもう少しだけ続きます。