鉄骨造(S造)の納まりを事前に検討しておくことで、実際の施工をしていく段階で「構造体が意外なところで見えてくる…」となる可能性を排除することが出来ます。
構造体を直接見せるというのは、「鉄骨を見せたい」という明確な意図がない限り、意匠的にはあまりお勧め出来るものではありません。
それも「思わぬところから鉄骨が見えてしまう」という状況では、意匠的に良い方向に進めることが出来ないのは明らかでしょう。
鉄骨という部材は耐火被覆が必要な事もあって、仕上材で隠すことが基本になりますから、こうした検討は鉄骨造の建物を進めていく中で非常に重要な項目だと言えます。
例えば鉄骨柱のベースプレートが床から出てしまう、というような問題などでは、実際に施工をしていみると本当に一目瞭然で分かってしまいます。
そうした現実を目の当たりにすると「どうして事前にベースプレートを下げておかなかったのか」と思ってしまうのは当然のことでしょう。
でも、図面を見ながら検討を進める事と、その図面をもとにして実際に施工をしてみた結果を見るのとでは、分かりやすさが全然違うものなんです。
だからこそ、そうした問題を事前に洗い出す為の道具として図面があって、図面を検討するプロの仕事が必要になる訳ですが…
そうは言っても、様々な箇所で同じような検討項目がある場合などで、少し抜けてしまうことがあるのは仕方がない事なのかも知れません。
これはもう人間がやる仕事の限界とも言えるでしょう。
もちろん膨大な検討項目があるからと言って、検討に漏れがある事が正当化される訳ではありませんが、人のやることに完璧な事などないので仕方がありません。
そうした間違いが発生することを極力少なくしていくように努力はするけれど、もし間違いが発生した場合には、それをどうやってフォローするのか。
こうした対応が実際には重要になってくる訳です。
構造体が想定していた仕上から出てしまった際に、意匠的にどうやって自然に見せるのか、施工としてどのような対処が出来るのか、などなど。
こうした対応こそが設計者と施工者の腕の見せどころでもあります。
もちろん図面の中だけで問題点を全て発見して、その中で全て解決まで持っていくことが出来れば、実際の施工段階で全然問題は出ない事になります。
その為に図面での検討があるのは事実なので、図面というのは非常に重要な検討の為の道具だという事になる訳です。
…というような感じで、図面での事前検討は非常に重要な要素だということを、ここでは少ししつこいくらいにお伝えしておきました。
さて、かなり話が横にそれてしまいましたが、鉄骨造(S造)の納まりに話を戻しましょう。
基本的に鉄骨というのは工場で鉄骨を製作して、完成品を現場に搬入することになる訳ですが、現場に鉄骨を搬入する為にはトレーラーなどで鉄骨を運搬しなければなりません。
時々道路でこうした状況の車を見かける事があると思いますが、これは工場から現場まで鉄骨を運搬している状態なんです。
柱と梁などをそれぞれ別々に運搬してきて、それを現場で組み立てていく、というのが鉄骨造の基本的な流れになってきます。
こうした流れは鉄骨造の一般的な流れになっていますが、鉄骨造のメリットはあくまでも「工場で製品が完成している」ところにあります。
そうしたメリットを完全に生かす為には、工場で出来る事はなるべく工場で対応するように検討をすすめる方が良い、ということに。
具体的にはどのような考え方をするかというと、鉄骨は出来るだけつなげた状態で工場製作をしていき、現場での組み立て時の接合作業を減らす事。
これが出来れば、現場での組み立ても少なくなる方向になるので、施工のスピードはもう少し速くなっていくのではないか、という考え方があります。