鉄骨梁のレベルを検討していく中で、先ほど出てきた「鉄骨は小さな段差が苦手」という項目が、具体的にどう困るのか。
鉄骨梁のレベルがどのようにダイアフラム納まりに絡んでくるのか、というあたりの話を今回は紹介しようと思っていましたが…
すみません、ちょっと順番が違うかもでした。
鉄骨梁のレベルによってダイアフラムの納まりが変わってくる、という話をする前に、鉄骨梁に小さな段差が出来るのはどのような状況なのか、というあたりを知っておかないと話が進みません。
ちょっと話が遠回りになってしまうような感じですが、今回は鉄骨梁のレベルを決定する要素である床仕上との関連について説明をします。
鉄骨造の構造体である鉄骨は、基本的に柱と梁で構成されるラーメン構造であることがほとんどで、そこに鉄筋コンクリート造の床を追加するというような考え方になります。
鉄骨梁と床コンクリートの関係は、鉄骨の上に型枠として鋼製の板を張っていき、そこに配筋をしてコンクリートを流す納まりが一般的です。
この図面を見ると、鉄骨梁のレベルは床コンクリートのレベルによって決まってくる、ということが分かると思います。
床コンクリートのレベルは床仕上材によって変わってきて、特に特殊な仕上や下地がない場所であれば、コンクリート床レベルはFL±0になることが多いです。
コンクリート床レベルがFL±0になる場合、鉄骨梁の天端レベルはスラブ厚さの分だけ下げた数字になる、という考え方になります。
コンクリート床の厚みは、その部屋の種類によってかかる荷重条件が変わるので一概には言えませんが、通常であれば150、少し荷重がかかる部屋などで180や200程度に。
なので当たり前の話ではありますが、鉄骨梁の天端レベルはFL-150とかFL-180とかFL-200という数値になってきます。
ここまでは特に何もない一般的な納まりの場合。
少々特殊な納まりになる場合には、上記で説明したような納まりにはならない為、コンクリートの床レベルをもう少し下げておく必要があります。
具体的な例を挙げてみると…
・石やタイルやフローリングなど厚みがある床仕上材の場合
・配線をする為にOAフロアとなっている部屋
・厨房や浴室等、水を使うため防水が必要な部屋
・その他床に何かを埋め込む場合
上記のような部屋は床仕上の為にある程度厚みが必要になる為、コンクリート床レベルをFL±0に設定してしまうと、最終的な床仕上がFLよりも高くなってしまいます。
もちろんそのような納まりにすると建物として使い勝手が悪くなってしまいますから、最終的な床仕上がFL±0になるように、コンクリート床レベルを下げておく必要があるんです。
そうなってくると自然と鉄骨梁のレベルも下げる必要が出てきます。
例えば床がフローリング・タイルの場合はこのような感じになります。
床がOKフロアであれば、OAフロアの高さは色々パターンがありますが、一般的なH=100で考えるとこのような感じに。
床仕上げ材がタイルの場合はこのような断面図になってきます。
ここで全ての納まりパターンを紹介することは難しいですが、幾つかの例を挙げて伝えたかったのは、鉄骨梁のレベルはそれぞれの部屋の床仕上によって決まるという事。
建物を施工する段階で言えば序盤の鉄骨工事ですが、その鉄骨梁のレベルを決める為には、床の最終仕上についての納まりをきちんと押さえておく必要がある訳です。
こうした考え方は鉄骨造だけではなく鉄筋コンクリート造でも同じなのですが、梁のレベルを決定しなければならないリミットは鉄骨造の方が圧倒的に早いです。
事前にシビアな検討が必要になってくることになるので、まずは鉄骨造で梁レベルの調整をどうやっていくか、というあたりを覚えてしまいましょう。