鉄骨柱のダイアフラム納まりを検討していった時には、50程度の小さな段差を設けることが難しいので、溶接が出来る程度に100段差を設ける。
前回はそのような解決方法を紹介してみました。
もちろんこのやり方がベストなのかどうかは建物によって違うはずなので、これはあくまでもひとつの例と考えて頂ければと思っています。
建築の納まりに「これが完璧な正解です」という項目はあまりなくて、色々な問題がありつつその中でベターを見つけていく事が重要になってきます。
梁を余分に50下げた時には、建築の納まりとしては特に問題ありませんが、設備的にどうなのかは絶対に確認しておく必要があります。
空調用ダクトを通す為に必要な寸法を減らしてしまう方向になり、設備的に問題がある可能性もあるので、慎重に納まりを検討していく事が求められます。
このような話は、建物の階高が低い場合などで割と頻繁に出てくる話で、安易に梁のレベルを下げてしまうと下階の天井に影響が出る場合もある訳です。
・床の納りによって鉄骨梁を余計に下げた
↓
・天井内のスペースが狭くなってしまい設備スペースが圧迫される
↓
・下階の天井高を下げるしかなくなってしまう
というような流れで、意匠的には出来るだけ天井高を高くしておきたいのに、鉄骨梁との関係でそれが実現出来なくなってしまう可能性があります。
そのあたりをトータルで考えた時に、鉄骨梁のレベルを下げないでおき、その結果としてOAフロアの範囲を狭くする、という選択肢を選ぶことも考えられます。
がちがちに融通が利かない考え方をすると「この部屋はOAフロアなんだから床を下げないとダメ」ということになるのですが…
その結果下階の天井高が下がってしまう事を回避できないのなら、どちらが重要な要素なのかを比較してみる価値はあると思います。
ただ、当たり前の話ですけど、こうした選択は床がタイルになっている為に床コンクリートと鉄骨梁を下げる必要がある、という場合には通用しません。
部分的にしか床レベルが下がっていない為に、床タイルを部屋全体に貼ることが出来ない、という納まりは意匠的な選択肢としてあり得ませんから。
そのような納りは絶対にあり得ませんが、床レベルと鉄骨梁を下げている理由がOAフロアの為、という場合であれば検討してみる価値はあるはず。
部屋の床下地をOAフロアとするのは、机などのレイアウトを変更した際にも適切な位置にコンセントなどを出しておけるようにするため。
そういった目的で床下地としてOAフロアを採用している以上「机はそこまで来ないよな…」という範囲を無理矢理OAフロアにする必要はない訳です。
とは言っても、本当に必要な箇所だけしか床コンクリートが下がっていない、ということにすると、将来のプラン変更に対応出来ない場合があるので少々危険ではあります。
このあたりの判断は結構難しいものですが、出来るだけお客さんが喜ぶような建物を造る、という考え方をベースにして適切な判断をしたいものです。
まあ正直なところをここで書いてしまうと、実際に建物を利用する方が天井の高さを気にすることは、余程天井が低くない限りはありませんが…
天井高さが2800から2700に下がってしまう事で、部屋の使い勝手として大きな問題になることはほぼないです、というか違いに気が付かない方がほとんどです。
なので、先ほどの話であれば、きちんとOAフロアの分だけ床と鉄骨梁を下げておき、天井の高さを少し下げるのが正解ではないかと思います。