今回取り上げる鉄骨造(S造)というのは、読んだままの意味なので特に説明不要かも知れませんが、建物の骨組みが鉄骨で構成されています。
RC造の場合は Reinforced(補強された)Concrete(コンクリート) という言葉の頭文字をとった言葉でしたが、鉄骨造の場合はどうかというと…
Steel : 鋼鉄・鋼
という単語の頭文字をとった言葉になります。
これは非常に分かりやすい意味を持っていますから、上記の説明を見れば「まあ鉄ですよね、やっぱり…」と言うしかないのではないかと思います。
鋼鉄で出来ている建物の骨組みだから「鉄骨造」というシンプルな話ですね。
ただし。
ひとくくりに「鋼鉄で出来ている建物の骨組みだから鉄骨造です」と言う説明だと非常に分かりやすいのですが、実際にはそれほど単純な話にはなりません。
鉄骨には色々な分類があるので選択肢としては非常に多く、それぞれの建物の特徴にあわせて多くの選択肢からどの鉄骨を採用するかを選定していくことになります。
なので、まずはそうした鉄骨の分類がどのような感じになっていて選択肢として存在しているのか、というあたりの話を取り上げてみたいと思います。
鉄骨の分類としては、大きな項目として以下のようなものがあります。
・材質
・形状
どのような材質と言っても鉄ではないの? という疑問が聞こえてきそうですが、鉄にも色々あるということで、ここではそれぞれの項目について簡単に説明をしてみます。
○材質
鉄骨造を構成する鉄骨の材質は当然鋼鉄ということになりますが、ひとくくりに「鉄」と言っても、実際には含有する成分によって様々な特徴が出ます。
それぞれの鋼材が持っている特徴によって、どのような部分に採用されるかが違ってくることになり、構造設計者はそのあたりを検討して構造設計していくことになります。
同じ鋼鉄とは言っても色々な仕様がある、というあたりがちょっとピンと来ない、と思ってしまう方もいるかも知れないので、ここで少しだけ補足を。
鉄と銅とアルミニウムは同じ金属というくくりですが、どのような成分で構成されているかが違うので、重さや硬さや色などが全然違ってきます。
これは何となく納得出来ますよね。
銅は10円玉、アルミニウムは1円玉に採用されている金属ですから、よく見かけたり手にしたりする中でその違いはよく分かると思います。
こうした違いが、同じ鉄であっても存在するということです。
鋼材の詳しい区分については別の項目で改めて詳しく説明していくことにしますが、ここでは同じ鉄骨であっても様々な仕様がある、ということだけを覚えておいて頂ければと思います。
○形状
鉄骨には幾つかの形状パターンがあって、その中からどのような形状を選定するかを構造設計者が決めていくことになります。
建物の構造体として鉄骨がどの部分に使用されるか、柱なのか梁なのかなどによって、適した鉄骨の形状は違ってくるんです。
建物の部位によって適切な鉄骨の形状が違うということは、つまり構造体としての鉄骨にどのような荷重がかかるかによって違う、という事です。
そうした状況の中で適切な選定が出来るように、鉄骨の形状には様々なパターンが用意されていて、強度や施工性やコストなどを考えながら設計していく訳です。
鉄骨にどのような形状のパターンがあるのか、というあたりの話は別の項目で詳しく取り上げていきますので、まずは色々な形状があるという事をここでは覚えておきましょう。
という事で…
建物の構造が鉄骨造(S造)です、という場合でも、それぞれの場所によって採用される鉄骨の仕様は色々あるという事がここでは分かります。
そうした部分について深く考えるのは構造設計者の役目になりますが、実際に鉄骨を施工する側も当然それを知っておいた方が良いはず。
鉄骨造ではこういった感じの細かい話が色々あって難しいのですが、建物を建てる仕事に関わる場合は避けて通ることは出来ません。
最初は何となくでも構わないので、全体的な概要とその中の細かい話については、一通り読んでみることをお勧めします。