鉄骨造であっても鉄筋コンクリート造であっても、梁は基本的に天井裏に隠れることになってきて、設備配管やダクトの邪魔になることも同じです。
だから設備の納まり検討にもよりますが、梁にスリーブを入れて納めるという考え方も同じになる場合が多く、鉄骨梁にもスリーブが必要になる。
そんな話を前回は取り上げてきました。
建物は構造体と意匠的な要素だけではなく、当然設備的な要素も合わせて検討していかないと、建物として機能しなくなってしまうので、こうした検討は非常に重要なものなんです。
という事で、今回は鉄骨造の梁にスリーブを入れる際の基本的な納まりがどのようなものなのか、というあたりについて考えてみる事にしましょう。
まずはスリーブの基本的な形状から。
鉄骨造(S造)の建物で鉄骨梁に配置するスリーブは、基本的には円形の開口ということになり、鉄骨梁を横から見た際にはこのような見え方になります。
もちろん鉄骨梁は構造体であり、構造体に穴を開ける訳ですから、その穴の位置はどこでもOKという訳にはいきません。
構造図に示されたスリーブの要領を厳守して、構造図に記されている補強を入れて、ようやく鉄骨梁に穴を開けることが出来るようになります。
鉄筋コンクリート造(RC造)の場合は開口の周囲を鉄筋で補強しましたが、鉄骨造(S造)の場合には、鉄筋がないので別の補強方法を考えるしかありません。
具体的にはどうするかと言うと、鉄骨のウェブに円形の開口を開けた周囲に、鋼板で補強をしていくというやり方をしていきます。
スリーブの補強イメージとしては上図のような感じで、断面図で納まりを表現すると、だいたいこのような図面になっていくはずです。
スリーブを入れることが出来る範囲はある程度制限されていて、なおかつ短い間隔で連続してスリーブを入れることも制限されています。
構造体である鉄骨に穴を開ける訳ですから、何の制限もなく開けたい位置に開ける事が構造的にNGというのは当然のことだと言えるでしょう。
構造的な条件を考慮しながらスリーブの配置を検討していく事になりますが、鉄骨を製作する前の段階でこうした検討を完了しておく必要があります。
スリーブは当然工場で施工してくることになりますから、鉄骨製作のタイミングに合わせてスリーブの位置を決定するのは当たり前と言えば当たり前です。
そのスピード感で検討を進めないと、工場で鉄骨を加工する際にスリーブの対応が出来なくなってしまい、間に合わなくなってしまうので仕方がありません。
これが意味するところはつまり、鉄骨を製作するという施工の序盤で、天井内の設備関連納まりをある程度固めておく必要があるという事。
これは実際にやってみるとよく分かりますが、そんなに早い段階で設備関連の天井内納まりを決めておくのは無理じゃないの? と思ってしまうくらいに難しいものです。
鉄骨造は事前に検討が大変という特徴がありますが、これはどの要素にも言えることで、何事も早めに決めていかないとダメというのはやはり大変です。
事前検討が完全でない場合にはどうすれば良いのかというと…
他の鉄骨まわりの検討と似たような話になってしまいますが、ある程度大雑把に設備の検討を進めていき、その配置を元にしてスリーブの計画をしていくしかありません。
完全には検討できていないけれどゼロではない、という感じの検討はちょっと中途半端な感じになってしまいますが、検討と決定とのバランスを取ることが重要です。
こうした事前の大まかな計画が崩れてしまう可能性はありますが…
何もスリーブの計画していない状態と比較をしてみれば、ある程度の想定を元にした計画をしておく方が有利だということが分かります。
本当は「その方が有利」とかいうレベルではなくて、そうやって進めておかないと後で話にならないので「そうやるしかない」と言うのが正解です。