鉄骨造(S造)の建物では、基本的に柱と梁を鉄骨で、床をデッキプレート+鉄筋コンクリートで構成していくことになります。
最終的な部屋の仕様によって、それぞれ床のレベルを下げる必要があったり、逆に下げてしまうと後で困るなどのレベル調整検討が必要になる訳です。
こうした検討によって床コンクリートの段差がどの位置に必要なのかが分かりますが、それが鉄骨の位置と上手くあってくるとは限りません。
コンクリート床と鉄骨梁の関係が都合良く調整された場合には、上記のような納まりが最も施工的にも構造的にも都合が良いです。
とは言っても都合良く毎回そうなるはずもないですから、その場合のどう納まりを調整していくのか、というあたりを今回は考えてみることにします。
・段差の位置を鉄骨まで移動出来るか検討する
・段差部分に鉄骨を追加する
・デッキプレートで段差を設ける
・デッキプレートを下げておきコンクリートを部分的に厚くする
前回紹介した納まりの調整方法は上記になりますが、それぞれのやり方には一長一短あって、どの方法がベストの選択肢になるかは場合によって違ってきます。
その場の状況によってベストの判断が出来るように、それぞれの選択肢についてどのような特徴があるのかをしっかりと知っておきましょう。
○段差の位置を鉄骨まで移動出来るか検討する
これは以前OAフロアの説明をした際にも似たような話をしましたが、要するに構造体の都合で床段差を決めてしまうと言う考え方です。
OAフロアや床暖房のように、なにも部屋全体の床レベルを下げておく必要がない、という場合にはこの選択肢を検討するのがお勧めです。
図にしてみるとこんな感じですね。
これは別に、楽をしたいが為に手抜きで床を全部下げないという考え方ではなく、必要な部分だけを下げておくことで効率化を図るという考え方です。
最終的な威仕上との関係や部屋としての性能が満たされるかという問題をクリアすれば、納まりとしてはこの考え方が最も効率的です。
ただ、床仕上材が分厚いものだったり部屋全体に防水が必要だったりと、部屋全体の床を下げておく必要がある場合には全然向かない考え方でもあります。
その場合はこの方針で考えても採用されるはずはありませんから、考えるだけ時間の無駄ということになるので別の方針を検討すべきです。
○段差部分に鉄骨を追加する
これもかなりシンプルで、床コンクリートに段差が必要な位置が明確になった際、そこに段差納まりようの鉄骨を追加してしまうという考え方です。
鉄骨造の床段差納まりの標準図は以前紹介しましたが、その標準納まりになるように鉄骨を追加するという考え方は確かに理にかなっています。
最初に出した例と全く同じ図面ではありますが、図面で表現するとこんな感じになります。
これは考え方としては確かにシンプルで理にかなってはいますが、ひとつ問題があるとすれば、鉄骨部材が追加されることによるコストの増加でしょう。
構造的に必要だからという訳ではなく、納まりの都合で追加する鉄骨になる訳ですから、簡単に言ってしまうと施工者の都合で追加する鉄骨梁という事に。
追加した分のコストが施主からもらえるかと言うと難しい場合が多いので、施工がやりにくくて発生するコストと鉄骨を追加する事によるコスト増を比較して検討する必要があります。
こうした話は完全に施工者側の検討事項になります。
コストを睨みながら、納まりと施工性の問題と最終的な見た目を考えて、色々とバランスを取って納めていくのは施工者の役割ということですね。