前回は鉄骨造の納まりパターンとして、鉄骨梁と床コンクリートとの関係がどのような感じになるか、というあたりを紹介してみました。
鉄筋コンクリート造では鉄筋が床の鉄筋と絡むことになりますが、鉄骨造の場合はスタッドボルトが鉄筋の代わりになる、という考え方でした。
スタッドボルトを鉄骨の天端に打ち込んだとしても、最終的にはコンクリートの中に入って隠れてしまうものですから、実際に建物を建てる仕事をしている方以外にはあまりピンと来ないかも知れませんが…
建物の構造としてきちんと機能する為に色々なことを考えている、というのは何となくイメージ出来るのではないでしょうか。
今回はそんな鉄骨梁と床コンクリートとの納まりについての話の続きとして、床レベルに段差が必要になった場合どのように考えるかを取り上げてみたいと思います。
鉄骨造では床コンクリートの型枠として「デッキプレート」を採用することになりますが、このデッキプレートの利点は以下のような部分にあります。
・型枠の解体が必要ない
・型枠支保工が必要ない
鉄骨柱と鉄骨梁を組み立てた後でデッキプレートを敷き込むことになりますが、その状態で下階には特に型枠支保工が必要ない、というのは作業性を考えると非常に大きいんです。
一般的な床の型枠では、型枠が自重とコンクリート打設時の重量で崩壊しないように、計算された内容に沿って型枠支保工が必要になります。
しかしデッキプレートは鉄骨梁に掛かっている状態で、さらにコンクリートの荷重を見込んだ仕様になっている為、コンクリートを打設する際の荷重にも耐えられる。
これはデッキプレートの非常に大きなメリットだと言えます。
ただ「鉄骨に掛かっている」というデッキプレートの特性を考えると、コンクリート天端に段差があるというのはあまり好ましい状態ではありません。
コンクリート床に段差があるということはつまり、デッキプレートにも段差が必要ということになり、その段差がデッキプレート的に許容されるかどうかという話です。
鉄骨梁と鉄骨梁の間に掛けていくデッキプレートの中央付近に段差がある場合、納まりによってはデッキプレートが二辺にかからない状態になってしまいます。
このような状態では「デッキプレートを掛けている」というイメージとは掛け離れて、片側が宙に浮いている納まりになってしまいます。
それでは「デッキプレートを採用すると型枠支保工が不要」というメリットがなくなってしまうので、コンクリートの段差納まりには色々な検討が必要になってきます。
まずは床段差部分に鉄骨梁がある場合。
段差部分に鉄骨梁があるのなら話は簡単で、鉄骨にデッキプレートが掛かる部分を少し変形させてしまえばそれで済んでしまいます。
段差の高さによって使用する部材は様々ですが、こうして鉄骨梁にデッキプレートを受ける目的で取り付ける部材を「デッキ受け」と呼びます。
下がっている床コンクリートレベルに合わせて鉄骨梁も下げておき、高い側のデッキプレート側にデッキ受けを取り付ける、という納まりが一般的ではないかと思います。
しかし実際には、このように床段差が必要な場所に都合良く鉄骨梁があるとは限らないので、その場合のどう考えるかなのですが、これには幾つかの考え方があります。
・段差の位置を鉄骨まで移動出来るか検討する
・段差部分に鉄骨を追加する
・デッキプレートで段差を設ける
・デッキプレートを下げておきコンクリートを部分的に厚くする
これらの考え方は「これが完全に優れているのでお勧め」というものがなく、残念ながらどのやり方にも一長一短があります。
なので、その時のシチュエーションによって最適な方法を選択する必要がありますが、その為にはそれぞれの特徴を詳しく知っておく必要があるはず。
という事で、これらの考え方をもう少し深く掘り下げて、その特徴と問題点などを次回にひとつずつ取り上げていくことにします。