鉄骨造の建物では、何らかの部材を鉄骨に固定する機会が結構多いのですが、そうした場合に構造体を痛めないようにピースを取り付けておく必要がある。
そうした話を前回は取り上げました。
ただ、鉄骨を製作するタイミングは施工のかなり序盤になっていて、その時点で鉄骨への固定方法が明確になっていない場合も結構あります。
だからこそ難しさがある訳ですが、ある程度予測を立ててピースを取り付けておく場合も結構多くなってくると思います。
予測が少し違っていたとしても、全くピースが付いていない状態に比べるとマシというか、まだなんとかなる状況なんですよね。
何も付いていない場合には、いくら後から検討しても全然意味がないですから。
鉄骨に溶接で何かを取り付けたいけれど…と思うのは、恐らく鉄骨を建てている途中ではなく、仕上材を施工するタイミングということになるかと思います。
そのタイミングにならない限り、そこに何が取り付けられるかは非常に分かりにくく、図面をよく見ないとそこまで読み取ることは出来ない。
鉄骨にはそうした難しさがあるんです。
鉄骨がすでに建っている訳ですから当たり前の話ですが、そうした段階では鉄骨を製作している会社はもう現場にはいません。
その代わりに、溶接作業は出来るけれど資格は持っていないという人が現場にはいて、その人が工場で取り付けておいた部材に溶接をする、という作業の流れになっていきます。
具体的にはどのような納まりになるかというと、これは取り付けるのがどんなものなのかによって違ってくるので一概には言えませんが、大体このような納まりになってきます。
これは納まりがある程度明確になっている場合で、こうして取り付けておくピースに対して現場で溶接して何かを固定していくことになります。
ただ、以前も似たようなことを書いていますが、鉄骨を製作開始する際に納まりがあまり確定していない場合も多いので、そうした場合はこのような納まりにするしかありません。
とりあえず鉄板だけを工場で取り付けておき、納まりが決まった段階でその鉄板に部材を現場溶接で取り付けていく、という考え方です。
このようなやり方は確かに二度手間ではありますが、現場で母材に対して溶接することもなく、鉄骨を製作する際に納まりが完全に決まっていなくても大丈夫というメリットもあります。
あまり良い呼び方ではないような気もしますが、現場で溶接が出来るようにという目的で、工場でとりあえず溶接しておく鉄板を「捨てピース」と呼びます。
最終的な納まりだけを考えると、結局はあまり必要がなかったという事になる鉄板なので、そうした呼ばれ方をするのだと思います。
あまり多用はしたくないところではありますが、検討のタイミングなどもあるので、仕方がなく採用されるやり方だと言えるでしょう。
捨てピースだけでは、仕上材を取り付けたい場面になって役に立たなくなってしまうことになりますが、それは耐火被覆という要素があるからです。
鉄骨梁や鉄骨柱に捨てピースとして鉄板を工場溶接した場合でも、結局耐火被覆を施工した後ではこのように残念な状況になってしまうんです。
これでは結局耐火被覆に鉄骨捨てピースが埋まってしまうので、耐火被覆を吹き付けするよりも前の段階で別の部材を溶接して取り付けておく必要があります。
そうした施工手順に問題もあるので、鉄骨に取り付けておくピースは出来るだけ具体的な納まりをイメージしたものである方が望ましいのですが…
時間的な問題があるので、どこまで待てるのかという問題も同じくらい重要な要素ですから、そのあたりのバランスを見ながら検討を進めていくことなります。
現実はなかなか理想的には進まないものですけれど、だからこそ検討する側としては工夫のやりがいがあるというか、腕の見せどころということが言えるのではないかと思います。