ちょっと順番が違ってしまったかも知れませんが、今回は鉄骨柱のジョイント(接合部)の具体的な納りがどうなっているかを取り上げてみたいと思います。
ただ、こうした鉄骨造の細かい納りについての話を、解説の序盤あたりで取り上げるべきかちょっと考えてしまいます。
なかなか説明が最後までたどり着かない感じになっているので、まずはさらっとした説明をして次の話題に進みたくなるのですが…
鉄骨造について話をする際に、ジョイントの納りを紹介しないのはやはりおかしいので、ちょっと面倒な話になるかも知れませんが取り上げることにしました。
以前も少し取り上げましたが、鉄骨の柱は2フロア分を一本の柱として工場製作をして、その柱を現場に搬入する事が一般的になっています。
もちろん階高や建物の条件などによってこれは変わってくるもので、2フロアを一本にする事が絶対という訳ではありませんが、色々な条件を考えるとこのパターンが最も多くなります。
これは、工場で製作した鉄骨を現場へ運搬可能な大きさに分割して、なおかつ可能な限り工場で一体として製作したい、という考え方があるからです。
施工者の立場から考えると、出来るだけ柱と柱のジョイントを少なくして、鉄骨を建てる手間とジョイント部分の施工手間を減らしたいという思惑があるので、そうした方針になっていきます。
このような鉄骨ジョイントの考え方を図面にしてみるとこんな感じです。
鉄骨柱と鉄骨梁をこのように分割して工場で製作し、それらの鉄骨を現場に搬入して組み立てるという工事の流れになります。
このような場合の鉄骨柱のジョイントがどのようになっているかというと、当たり前の話ですが鉄骨柱の形状によって納まりは大きく違ってくることになります。
まずは一般的な鉄骨造で多く採用されるコラム柱の場合ですが、この場合は現場で溶接することによって柱を接合することが一般的です。
ジョイントの場所としては、溶接で接合する作業がやりやすいという理由から、FL+1000程度のレベルでジョイントを設けることが多いかも知れません。
コラム柱ではなくH鋼の場合は、もちろん溶接で接合する場合もありますが、鉄板ではさみ込んでボルトで固定していくという接合方法もかなり多いです。
こうした納まりは鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)に多いので、この場合の詳しい納まりはSRC造について説明する際に取り上げることにして、今回はコラム柱のジョイントをメインにします。
溶接によって柱を接合する場合の納まりですが、具体的な寸法も押さえた拡大図ではこのような状態になります。
鉄骨の溶接に関しての納まりは上図のように割とシンプルになるので、拡大図で表現するとちょっと拍子抜けしてしまうかも知れません。
こうした形状で溶接を柱全周にまわしていくことによって、鉄骨柱と鉄骨柱は構造的に一体として見なされる事になります。
溶接で接合する場合の問題点としては、ジョイント部分が溶接によって少し盛り上がってくることになる為、意匠的には今ひとつの見え方になってしまうという事。
これはもう溶接という納まりである以上仕方がない事なのですが、例えば鉄骨を露出で見せたいというような場合には、この溶接が見えてしまう状態が大きなマイナスになってしまいます。
この状態を「鉄骨柱のジョイントはこういうものだから」と割り切れるか、それとも「こんな見え方になるなら仕上材で隠した方が良いか」となるかは意匠設計者の判断です。
正直なところお世辞にも綺麗とは言えない状態で、私としてはどうしても電車のホームにある柱を思い出してしまうので、仕上材で隠した方が良いような気がしています。
ただ、鉄骨柱を他の仕上材で隠そうとすると、下地の寸法などから柱形がかなり大きくなってしまうというデメリットがあります。
やはり鉄骨柱だけで見せると細い柱型として見せることが出来ますので、ジョイント部分の見え方だけで判断する訳にはいかない、というのが現実です。