鉄骨造の納まりを検討する際には、実際に鉄骨を工場でどのように製作していくのか、というあたりをしっかりと意識しておく必要があります。
鉄骨は溶接することによって接合されていく、という事を考えておかないと「図面ではそう描いてあるけれど実際には出来ない」という状態になってしまい…
これは建築のプロとして結構恥ずかしいです。
ただ、プロとして恥ずかしいとは言っても、あまり深く物事を考えないで仕事を進めると、割と頻繁にそうした残念な状況になってしまうはず。
深く検討したつもりになっていても問題は発生するものなのに、検討をしないでそのまま進めると問題だらけになるのは当然と言えるでしょう。
…と、様々なパターンのトラブルを色々経験してきた私としては、失敗した時に恥をかいた経験を思い出しながら今これを書いています。
だからこそ教訓を得ることが出来た、とも言えますが…
こうして今までたくさんの失敗をしてきました、というような事を書くのはちょっと躊躇われるものですが、残念ながら事実なので仕方がありません。
ただ、仕事で色々な失敗をしたと言っても、知識がないことが原因でやってしまう失敗というのはそれほど深刻なものではないと思っています。
別に言い訳をするとかではなく、自分が持っている知識の中で精一杯検討をした結果の失敗であれば、それは大きな失敗とは言えないはずです。
そうした失敗をすることによって自分の知識と経験を増やし、次回は同じ失敗をしない、という事になればOKではないかと…
ちょっと勝手な考えですが私はそう思っていますし、今までそうやって仕事を覚えてきました。
さすがに全く同じ状況で前回と全く同じ選択をして、その結果失敗をしたという事であれば、それは全然救いがない失敗と言うしかありませんが…
次回には同じ失敗をしないようになる、という種類の経験が出来るのなら、仕事で失敗することも非常に貴重な経験と言えるのではないでしょうか。
さて、話は戻って。
前回紹介した鉄骨梁の段差部分ですが、結局通しダイアフラムの溶接が出来ない関係で、50mmの小さな段差を設けるのは難しいという結論になりました。
ただ、ダイアフラムを50mmの間隔で入れるのは難しい、というのは確かに事実ではありますが、だからと言って鉄骨梁を±0にすることは出来ないというのも事実。
小さい段差を設けることは鉄骨納まりとして難しいけれど、平面的なプランと床の納まりを考えると鉄骨梁は確実に下げる必要がある、という状況です。
こうした困った状況を最終的にはどのように納めるのか、というあたりの話を今回は具体的に考えてみることにします。
事務室内をOAフロアとする為、鉄骨梁のレベルは他の鉄骨梁に比べて50mmは下げておく必要がある、というのがまずは前提条件です。
しかし鉄骨納まりを検討していく中で、50mmだけ鉄骨を下げるという事が、ダイアフラムの製作上の問題としてある訳ですが…
それならば、鉄骨の製作が可能なくらい鉄骨梁を下げてしまう、という対処方法がひとつの選択肢として考えられます。
ダイアフラムの納まりを考えると、鉄骨梁をあと50mm下げておくことが出来れば鉄骨の製作は可能なので、そこまで鉄骨梁のレベルを下げてしまうという考え方です。
鉄骨梁を下げたからと言ってコンクリート床を無理に下げる必要はなく、上図のような納まりにしておけば床との関係は特に問題ありません。
ただ、鉄骨梁のレベルを下げると言うことはつまり、下階の天井裏スペースを少し狭くするということを意味しています。
こうした検証をするには設備的な検討を進める必要がありますが、スラブを下げる事が絶対条件であれば、余分に梁を下げていくしかないのが現実です。
それでなんとか設備を納めることが出来るように、なるべく早い段階でこうした問題を抽出して解決していく必要があります。