平面プランがどのような感じになるのかによって、それぞれの部屋の用途が決まってきて、それぞれの部屋の床仕上材や床の下地情報がある程度決まります。
そうした方針に合わせて、構造体である鉄骨梁のレベルを下げたりする検討を進めるのは、構造設計者の役割という事になります。
建物の意匠的な部分によって構造の方針が決まる、あるいは構造は最終的な仕上ラインから出てこないような計画を進める必要がある。
こうした考え方は建物を設計していく上で基本となる考え方ですが、今回のような例を挙げてみるとそれが実感出来るのではないかと思います。
そうした検討の結果、例えば厨房がある付近の床と鉄骨梁は下げるとか、例えば事務室がある範囲はOAフロアにする為に床と鉄骨梁を下げるような表現が構造図には記載されています。
構造図そのままで施工を進めてスムーズに納まれば良いのですが、そうでもない場合は結構多いですから、もちろんそこから先は施工者としてきちんと検討していく事に。
そうして適切な関係で床のレベルと鉄骨梁のレベルを設定して、その結果を鉄骨図に盛り込んだ後で鉄骨の製作に入る、というような流れが基本になります。
ただ、それぞれの床仕上や床下地だけを見て鉄骨梁のレベルを設定しても、鉄骨の納まりを考えた時にそれが出来ない場合もあります。
それが以前紹介した「鉄骨は小さな段差が苦手」という部分で、という事で、ようやく話をここまで戻してくることが出来ました…
例として以下のような平面プランがあって、それに合わせて鉄骨梁を設定したというモデルケースについて考えてみましょう。
簡単すぎるプランではありますが、事務室があってそこをH=50のOAフロアとしたい為、部分的にコンクリート天端レベルを下げておきたい、という感じのプランです。
事務室を無理矢理全部-50にするかどうかは悩ましいところですが、少しだけであれば無理に鉄骨や床を下げないという選択肢もあります。
鉄骨梁のレベルを下げる事自体はそれほど難しいことではありませんが、それはつまり下階の天井裏スペースを小さくしてしまうという事を意味しています。
建築的にはそれほど大きな影響がないのですが、こうした積み重ねが設備関係の納まりに大きな影響を与えることもあるんです。
そういった理由から、今回は鉄骨に微妙にかかっている部分をOAフロアにしない、という選択をして、下図のような床と鉄骨梁の下がり範囲に設定します。
コンクリート床と鉄骨のレベルが記入されているだけでは分かりにくいので、そこに平面プランを重ねてみるとこんな感じになります。
平面プランと床を下げておく範囲、そして鉄骨梁を下げておく必要がある範囲がこれで分かりやすくなったかと思います。
これが鉄骨梁レベル設定の検討をする基本的な流れになる訳ですけど、ここで問題になってくるのが鉄骨梁のレベルがFL-50となっている下図の部分。
床仕上とコンクリート床との関係は上図で全然問題ないのですが、鉄骨柱と鉄骨梁との関係を考えていくと、これがちょっと難しい納まりだという事が見えてきます。
上図で丸印が記入されている部分について、柱のダイアフラムと鉄骨梁の関係を図面にしてみると、このような納まりになります。
鉄骨梁が鉄骨柱に取り合う部分にはダイアフラムが必要ですから、今回の例では通しダイアフラムを入れた納まりで作図しました。
上図の何が問題なの?
…と思われる方もいると思いますが、ここで「鉄骨は小さな段差が苦手」という鉄骨の特徴が問題になってくる訳です。
具体的にどのあたりが問題になるのかという話と、それならどうやって納めれば良いのか、というあたりの話は次回に詳しく説明をします。